「あんなことしなければ...」僧侶が説く、意味のない後悔をやめられる1つの方法
PHPオンライン衆知 / 2024年10月16日 11時40分
「あの時こうしていれば...」誰もがこのように後悔した経験を持っているでしょう。しかし、いつまでも悔やみ続けるのは、心の健康を損なう行為でもあります。本稿では書籍『自分という壁』より、後悔の苦しみから解放されるためのヒントを紹介します。
※本稿は、大愚元勝著『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』(アスコム)より内容を一部抜粋・編集したものです。
「後悔」は心の自傷行為
「反省はしてもいいけれど、後悔をしてはいけない。まったく意味がない」
ブッダは後悔というものを非常に厳しく諫めました。
「あのときこうしておけばよかった」「あんなことしなければよかった」という後悔は、心の傷口を自分で刺しているのに等しいこと。過去に抱いた嫌な気持ちを、わざわざ、自ら、もう一度味わっていることになるのです。同じ失敗を何度も悔やむということは、グサッ、グサッと自分をめった刺しにしているのも同然と考えましょう。
いったん気持ちが落ち着いたとしても、その1年後、2年後に再び思い出して......ということをやっていると、全身傷だらけ、トラウマまみれになってしまいます。いうなれば"心の自傷行為"であり、自分で自分を痛めつけていることになります。
後悔の念が生まれるのは仕方がないことですが、ただ悔やむのではなく、なぜそれをやってしまったか(やらなかったか)を冷静に分析して、未来につなげる糧として活かそうとする姿勢を持つことは大切です。これは後悔ではなく「反省」であり、ブッダも推奨しています。
あえて後悔を楽しむのであれば、それもありでしょう。
「あのときは俺もガキだったなぁ。なんであんなことをしたんだろう。若気の至りって怖いなぁ」
こんなふうに自分のなかで、あるいは他人に対して笑い話にできるのであれば、自分の感情や過去の言動を客観的に見つめられているということです。いわゆる"黒歴史"を明るい話題に変えることができているのなら、思い出したときに心に傷を負うことはありません。
要は、過去に起こった出来事をどうとらえるか。どのように考え、自分のなかでいかに処理していくかが重要ということです。
「誰かのせい」にしても苦しみは消えない
自分で選んでやった(やらなかった)ことだと自覚する。決して他人のせいにしない。
これらも、後悔してしまったときにとるべき、有効な対処法です。
「親がこの学校のほうがいいというから入学したのに」
「○○さんの言葉を信じたせいでひどい目にあった」
こういった考え方は、他人に責任を押しつけてしまっています。相手とどんな関係にあろうが、いかなるアドバイスをされようが、最終的に行動に及んだのは自分自身。その決断を下したのは、あくまでも自分なのです。ひとしきり悔やんだあとは、他人に責任転嫁せず「自分がバカだった。もう同じことはくり返さないようにしよう」と反省しましょう。
そして、あとになって他人のせい、なにかのせいにしないように、行動したり決断したりするときは、「本当に自分がやりたいことなのか?」「本心から望んだことなのか?」を自分自身に問いかけたうえで実行していくようにしましょう。
自分と向き合うこと、自分の頭で考えることにはパワーが必要で、とてもしんどい作業です。「誰かの言っていること」を鵜呑みにして決断するほうがずっと楽なので、ついそうしたくなってしまいます。
でも、後悔のない人生を歩んでいくためには、自分で考えることを諦めてはいけません。とことん考え抜いて自分の判断で行ったことであれば、たとえどんな結果になったとしても「自分で選んだ道だから仕方がない」と納得することができます。後悔をゼロにすることはできないかもしれませんが、頻度は少なくなるはずです。
また、起こってしまったことに対する評価を変えるというのも、ひとつの方法です。
私は子どものとき、親の言いつけを守らずに大けがをしてしまったことがあります。
「危ないからストーブの前で着替えちゃダメだよ」
母親にこう言われていたのに、両親が留守のあいだにストーブの前で着替えようとして、私の真似をしようとした妹と場所の取り合いになり、ストーブの上のやかんをひっくり返して足に大やけどを負ってしまったのです。そのやけどの跡は、一生消えない傷として残りました。
何度も手術を受け、一時は車いす生活にもなりました。当時はそれがすごくショックで、「どうして言いつけを守らなかったのか」という後悔と、親への申し訳なさでいっぱいでした。
でも、大人になるにつれて、この出来事は自分に対する戒めなのだと思えるようになりました。今では「調子に乗っちゃいかんな」「やってはいけないことをやるのはダメだな」と、傷を見るたびに思うようにしています。
失敗をくり返さないためのありがたい傷。こう思えるようになるには、人によってある程度時間が必要になるかもしれません。それでも、このように見方や評価を変えることによって、後悔とさよならすることもできるのです。
生きているうちに墓穴を掘れ
人生において究極の後悔は、自分が死ぬ直前になって、「あれをやっておけばよかった」「あの人にこれを伝えたかった」などと思ったり、亡くなってしまった人に対して「もっとこうしてあげればよかった」などと思ったりすることです。そんなタイミングで悔いが発生してしまうと、そこから取り戻すことは難しくなってしまいます。だから、後悔は若いうちにたくさんして、手放すテクニックを磨いていくに越したことはないと思います。
失敗はいい。
反省もいい。
でも、後悔は良くない。
今からこれを、強く意識しましょう。元気に生きているうちは、償いや埋め合わせができます。「明日があるさ」が通用します。
しかし、当たり前のことですが、人はいつ死ぬかわかりません。これは自分だけでなく、相手や周りの人だって同じです。後悔しない人生を送るためには、今現在抱えている心のモヤモヤへの対処を先送りせず、そのときそのときにしっかりと向き合っていくようにしましょう。
私のお師匠さんは、よくこう言っていました。
「早く墓穴を掘れ」
墓穴を掘るとは、「自ら身を滅ぼす」という意味で使われることわざですが、お師匠さんは違う意味で使っていました。生前に自分のお墓を建てる、文字どおり墓穴を掘ると幸せな人生を送れるようになるというのです。
これは霊的な力が働くとか、そういうスピリチュアルな話ではなく、自分のお墓をつくる、つまり死を意識すると「いつか自分はここに来るんだ」という自覚が芽生え、残された人生を無駄にせず、一日一日を一生懸命生きねばならないという覚悟が決まる―そんな意味合いを含んでいます。
この言葉を最初に聞いた瞬間はきょとんとしてしまいましたが、今ではその真理がよくわかりますし、まさにそのとおりだと実感しています。生きているうちに墓穴を掘ることは、後悔のない人生を強烈にバックアップしてくれる有効な行為なのです。
だから、明日死ぬつもりで決断し、今日を全力で生きるように意識してみてください。自分の行動や言動に対して後悔するケースは、今よりも格段に減っていくと思います。
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