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なぜ、他人への嫌悪感は生まれるのか? 人間関係を複雑にする「思い込み」

PHPオンライン衆知 / 2024年10月2日 12時0分

他人に嫌悪感を抱いてしまうのはなぜか

職場の上司、家族、友人...誰しも、一度は「この人とは合わない」と感じたことがあるはずです。他人に対する「嫌悪」の感情は、心の負担になっていきます。苦しみの元になる「嫌悪」の感情を手放すには? 書籍『自分という壁』より、住職の大愚元勝さんのお話を紹介します。

※本稿は、大愚元勝著『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』(アスコム)より内容を一部抜粋・編集したものです。

 

不必要な「嫌悪」に執着していませんか?

「憎しみ・恨み」と同じように、怒りの延長線上に存在するのが「嫌悪」の感情です。私たちがなんらかの対象を退けたい、反発して遠ざけたいと思う感情の一種です。そしてこの嫌悪にも、避けられないものと避けるべきもの、手放すべきものと手放すことができないものがあります。

例えば、目の前にヘビやムカデがいきなり現れたとしましょう。一部の爬虫類好き、虫好きの人は歓迎するかもしれませんが、たいていの人はびっくりしますし、その後に「うわ、嫌だな」と思うはず。気持ち悪いとか、近づきたくないとか、そういった感情が生まれる瞬間です。この嫌悪は、必要なものに該当します。

なかには毒を持ったヘビやムカデもいますので、外敵から身を守るという面では正しい感覚。人間の体は、脳にある扁桃体という部位に備わっているセンサーがそれを察知するようにできているのです。生き延びるために必要な感覚なので、意識的に手放すことはできません。

一方、それ以外の嫌悪、おもに他人に対して抱く嫌悪は、ただちに捨てたほうが良いでしょう。こちらは生理的なものではなく、人間の社会的動物化が進み、脳が発達してきたことによって生まれたもの。持っていてもなんの役にも立ちませんし、自分の心を重たくするだけです。

「あいつは本当に嫌なやつだな」
「あの人とは価値観がまったく合わない」
「○○人(どこかの外国人)って常識がなさすぎるよ」

そう思ってしまうことはあるかもしれませんが、それ以上、自分のなかでの嫌悪感を膨らませることはやめましょう。一人ひとり違った性格をしているのと同様に、持っている価値観も異なるのが当然だからです。異国の文化と日本の文化は同じではありませんし、男性と女性、同年代と別の世代など、属性や立場が違えば考え方も自ずと異なったものになっていきます。

自分の価値観や常識は唯一無二の正解ではない―これをしっかり認識しましょう。自分の基準を相手に押しつけることはできませんし、押しつけたところでその人が変わるわけでもありません。

親、兄弟、先生、友人、恋人、先輩、後輩、同僚、上司、部下、著名人、メディア―など、すべての相手に対して同じことがいえます。「自分と違う」「自分と合わない」ことを理由に好き・嫌いの判断をすることには、なんの意味もありません。

むしろ自分の心に「嫌悪」という重しが増えるだけです。「あの人と自分はここが違うんだな」という事実を認識するだけでいいわけで、そこから好きだ嫌いだという白黒をつける必要はないのです。

 

「嫌い」より「好き」を増やすと人生はラクになる

「これ(この人)は嫌だな」という嫌悪感を抱いたら、まずはそれが必要なものか、不必要なものか、考えるクセをつけましょう。身に危険が及ぶようなことに対する嫌悪であれば、その感覚は正しいと思って構いません。

これに対し、自分の命や生活を脅かすわけではないにもかかわらず、その対象に対して生まれた嫌悪であったら、たんなる自分の思い込みと妄想だと考えるようにしましょう。

自分の生い立ちや環境によって形成され、刷り込まれてきた"独自の基準"であり、それを相手に求めてはいけない―そのようにとらえてください。必要な嫌悪と不必要な嫌悪を見分けられるように努めることにより、観察力が身につきます。

そして、それまで自分が嫌だと思っていた対象の、新たな一面が見えてくることもあります。

「ずっと気に入らなかったけど、いいところもあるじゃん。思いのほか面白いやつだった」

そんな心境に至ったらしめたもの。マイナスの感情をプラスに転じさせることに成功した証拠です。自分にとって嫌いなものを排除し続けている限り、世界は開けませんし、心も苦しいままです。それよりも受け入れることで可能性を広げていくほうが、あなたの心もラクになっていくはずです。

一見、不愛想で怖そうだな......と思っていた人が、話してみたらものすごく良い人だった、というようなことはありませんか? 誰にでも、きっとあると思います。その感覚を大事にしていってください。

 

先輩が教えてくれた「思い込み」の外し方

私が空手を始めたころ、同じ道場にどうにも苦手な先輩Mさんがいました。苦手というのは生ぬるい......正直にいえば、大っ嫌いでした。道場の先輩方はみんな、私より年齢も経験も上の実力者ばかりで、初心者の私が敵うわけがありません。当然、諸先輩方はスパーリングのときはいつも手加減をしてくれていました。

ところが、Mさんはいっさい手を抜いてくれません。スパーリングですので、ボコボコとまではいきませんが、いつもコテンパンに叩きのめされました。

「こっちはまだ初心者なんだから、そこまですることはないだろう」
「Mだけは絶対に許せない」

いつもそう思っていました。

そして時は流れ、私が競技引退をかけて臨む全国大会の試合がやってきました。すると、その試合が決まるやいなや、Mさんからぶ厚い封筒に入った大量の便せんが送られてきました。

目を通してびっくり。なんとそこには、私の技のクセや長所・短所が、びっしりと手書きで書き込まれていたのです。それだけでなく、試合の戦い方やペース配分などのアドバイスも、イラスト付きで事細かに記されていました。Mさんは、私の過去の試合のVTRを全部見返して、研究・分析をしてくれていたんです。

これには本当に驚きました。Mさんは私のことを嫌っていて、ずっと意地悪をされてきたと思っていましたので......。今ではMさんにものすごく感謝しています。と同時に、この話を思い出すたびに、不必要な嫌悪の無意味さを痛感します。

くり返しますが、自分が嫌いだと思っているものでも、冷静に観察していくと、違った側面が見えてくることがあります。その嫌悪は、自分の思い込みによってもたらされたものであることに気づきます。そして、新たな世界が広がります。ぜひとも、そこを目指してください。

不必要な嫌悪を原動力に行動しても、本当の意味での幸せを手にすることはできません。捨て去ったほうがはるかに、幸福で充実した人生を送ることができるのです。

 

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