なんでも上手くこなせるのに「器用貧乏」に陥ってしまう人の決定的な原因
PHPオンライン衆知 / 2024年10月23日 12時0分
器用なのに報われず、自分のことは後回しで頼まれ事を何でも引き受けているうちに、精神的なストレスや不満を抱え込んでしまう「器用貧乏さん」。どういう人に多いのか、どうすれば脱出できるのか、通算1500回以上の講座やセミナーを開催してきたメンタルコーチの龍夏さんが解説します。
※本稿は、龍夏著『何をやっても中途半端…な 「器用貧乏さん」から脱出する本』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
そもそも「器用貧乏」の原因とは?
「龍夏さん、聞いてください!同期が昇格したんです。わたしは社内で便利屋として重宝されているだけで、ずっと現状維持のままなのに」
「またやりたくない仕事を押し付けられました。みんなには『そんなの断ればいい』って言われるけど、そんなことしたらダメですよね」
「あれもこれもと手を出すのですが、すぐに続かなくなってしまうんです」
そんなお悩みを話される方のほとんどが、「わたしって、器用貧乏なんです」とおっしゃいます。そのときの表情は決まって元気がありません。言い慣れているのか、自虐的に苦笑いしながらおっしゃる方も多いです。誰もがマイナスの意味で使っているのが「器用貧乏」という言葉です。
ズバリお伝えします。器用貧乏が悩みになる原因は「自分にとって何が大事なのか」、すなわち自分軸が明確になっていないからです。反対に言えば、自分軸を見つけることで、公私共に「何をやっても中途半端」な器用貧乏さんから脱出できます。
軸という漢字は「回転する車のよりどころとなる部分」という意味からできていて、物事の中心にあり支えになるもののことをいいます。もしも自動車の車輪に軸がなかったら、車輪は四方にバラバラに動いてしまい走ることができません。ヘリコプターやドローンも、軸がなければ翼が回転できないので飛ばすことができません。何かを動かそう、先に進もうとするときに軸がないと、持つべき機能を果たせないため目的を満たすことができず、致命的な状態になります。
これはわたしたち人間も同じです。自分軸とは、自分という存在を支える柱のようなもの。自分軸がなければ自分にとって何が大切なのか、自分の人生をどう生きるのか、という判断を他人の価値観に委ねなければならず、いつまでたっても人の言いなりや世間に流されて生きるという状態になってしまいます。だから誰もが見つける必要があるのです。
自分で自分にピンスポットを当てることで「才能長者」に変わることができる
自分軸を明確にすると、「やる気」「能力」「やり方」「目的・ゴール」を見いだすことができます。そしてあなたの中にはすでに軸のモトが眠っているのです。
器用貧乏さんは何でもある程度は器用にこなすことができるので、自分では自分の良いところや特徴に気がついていない方がとても多いです。例えるなら、「ミラーボール」のような存在なのです。
誰しもが複数の自分の特徴を持っていますが、器用貧乏さんは特に広範囲の知識や経験を有しています。ミラーボールの鏡の1枚1枚にそれらが書かれているイメージです。ただミラーボール、つまり多面体あるがゆえに、何をやっても突出するものが見いだせず、自分では強みを発見することが難しいのです。結果的に多面体な自分の全方向に光を当てていたり、自分で照明を消して真っ暗にしていたりする人も多く、誰かに光を照らしてもらうことでようやく自分のどの面が強みなのか認識できます。
器用貧乏さんとは反対に、才能を活かして富を得たり、理想の人生を歩める幸福な人のことを「才能長者」といいます。ピンスポットのような一点の光を自分で自分に当てられるようになり、唯一無二の自分だけの輝き、すなわち才能を見つけ出すことができた人です。
才能長者になると、今まで器用貧乏が理由で諦めていたことや、損をしたり報われない思いをしてきたことが解消されます。自分の才能がわかり漠然とした不安がなくなると、今まで周りの人に流されたり、言われるがままにやっていた学びや資格取得などに費やしていた時間もお金も使わなくなります。仕事の場面でも、できるからやっていた、というスタンスから本当にやるべきことに時間を費やせるようになるのです。
これからは自分で自分の正解を創り出していく時代へ
最近は一芸に秀でることのみが評価される時代から、多様な個性や強みを活かして生き抜く時代へ変容しています。予測が非常に困難な自然災害の発生や、ビジネスにおける「VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)」で語られる、目まぐるしく変転する予測困難な状況など、先行きの見えない不安な時代に突入していることは周知のとおりです。これからは、ますます正解がない時代へと変化が加速していくでしょう。
時代の変化に伴い、学校教育も大きく変化しています。学習指導要領の変更により「アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)」が小学校から取り入れられています。これからは主体的に周りの人とかかわったり、試行錯誤しながら自分で問題を解決していく力を養うことが重要となっていきます。
そんな時代を生きていくわたしたちは、「自己理解による自分軸の発見」と「主体的に周りの人とかかわるコミュニケーション能力」を磨いて、自分の正解をつくり出していくことが必須となっています。
自分の良さを客観視し、自分の価値は自分のために活かす時代において、器用貧乏は困ること、ネガディブなもの、自己肯定感を下げるものかもしれませんし、いかに人生に悪影響を及ぼしているかを、そしてあらゆる損失を生み出しているかを、たくさんのお悩み相談に乗る中で、そして当事者としても痛感してきました。ただ、器用貧乏からは脱出できます。たくさんあるあなたのできることやこれまでやってきたことを自覚して、整理し、キラリと光るポイントを見つけていくだけで器用貧乏さんは才能長者さんに生まれ変われます。
器用貧乏から脱出すると決めたら、どうかその決意を大切にして、諦めずに行動してください。あなたが決めたことは、あなたが実現しなければ、未来永劫、誰も叶えることはできないのですから。
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