認知症の犬と介護猫、下半身不随の猫...ひとつ屋根の下、支え合って生きる
PHPオンライン衆知 / 2024年10月24日 11時50分
添い寝してなめてあげる
障害をものともせずたくましく生きる猫、難病を抱えながらも家族の愛に包まれて暮らす猫、ペットロスの家族を救った猫、認知症の犬を献身的に支えた猫、人間なら128歳の年齢まで生きた猫……奇跡みたいな"ふつうの猫"たちの、感動の実話を集めた書籍『猫は奇跡』(佐竹茉莉子著/辰巳出版)が発売されました。
本書には大の猫好きとして知られる小山慶一郎さんや、『25歳のみけちゃん』(主婦の友社)の著者で児童文学作家の村上しいこさんから推薦コメントも寄せられています。
本書には、著者の佐竹茉莉子さんが丁寧に取材した、猫と人の物語を17話収録。それぞれの「奇跡」が共感と感動を呼ぶ、猫好き必読の一冊となっています。
本稿では『猫は奇跡』から全3話をご紹介。第3回は、テレビでも特集され話題となった認知症の犬しのと介護猫くぅ、下半身不随の猫らいの物語です。
※本稿は、佐竹茉莉子著『猫は奇跡』(辰巳出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです
くぅとしの
しのの頭がガクッと落ちないよう、あごの下から支える
認知症の老犬しのをかいがいしく介護する雄猫くぅの日常を綴った晴さんのフォトエッセイ『くぅとしの』(辰巳出版)では、犬と猫の間に育まれた奇跡のような「無償の愛」が、人々の胸を照らし続けている。
車道を右往左往していた放浪犬「しの」と、行き倒れのノラ猫「くぅ」は、1年違いで晴さんに保護されてやってきた。くぅはしのを初めて見た瞬間、ひとめぼれをしてしまった。年上の女しのはくぅにクールを通したが、くぅはめげることなくアタックし続けた。
しのが認知症となると、くぅはつきっきりでこまやかにお世話を始める。食事にも付き添い、サークル内で徘徊を始めると先回りして倒れないように支える。毛づくろいをしながら寝かしつけもした。認知症となってからのしのに、自分の愛を丸ごと受け入れてもらえたくぅは、とてもしあわせそうだった。
くぅとらい
くぅとらい(右)。「おやつ、まだ?」
キジトラの雄猫らいは、2018年、交通事故に遭い大ケガをして保健所に収容されていた。殺処分寸前のところでボランティアさんの手を借りながら、当時しのの介護真っ最中だった晴さんが迎えた。
保護猫は他にもいるのだが、くぅは誰に対してもやさしく、下半身不随のらいとも男同士の友情で結ばれた。らいも老いたしのに親愛を示し、くぅとしのとらいの3ショットは、この上なく平和な光景だった。
しの亡きあと、体調を崩し、さびしそうな目をしてひとり過ごすことが多くなったくぅにそっと寄り添ったのは、らい。くぅの目にも、少しずつ光が戻ってくる。晴さんの長男いちくんの誕生で、猫たちの日常はもっと楽しくにぎやかになった。
らいとみんな
いちくんとらいの語らい
2022年の春にくぅはしののいる空へ旅立っていった。14歳を過ぎたらいは今、古参として猫たちの中心にいる。次々とやってくる預かり子猫や保護猫たちの譲渡までの遊び相手を引き受ける。子猫たちにとっては、らいおじちゃんなのか、らい兄ちゃんなのか、大好きな存在であることは確かだ。
いちくんも3歳となった。生まれたときから猫たちに囲まれているので、猫が大好き。猫はきょうだい。らいとはいいコンビで、いつも語らい、チュッやハグを交わす。今のところは、らいの弟分だが、すぐに頼もしいお兄ちゃんになることだろう。
大好きだからそばにいるよ。大好きだから何かしてあげたい。打算もてらいもなく、「大好き」を伝え合い、やさしさをバトンタッチしていく動物たちと幼子。ひとつ屋根の下、その輪のなかにいることが晴さんのしあわせだ。
預かり子猫の面倒を見るらい
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