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職場の人間関係がつらい...心理学から考える「逃げる決断」のタイミング

PHPオンライン衆知 / 2024年12月3日 11時50分

同調圧力

職場の環境や人間関係で悩み、もう逃げ出したいと思っても「せっかく今まで頑張ってきたから...」「もう少し頑張らないと...」と足踏みしてしまうことも。「逃げたい」と思ったときに覚えておきたい3つの心理学的ポイントについて、精神科医Tomyさんの書籍『穏やかに生きる術』より解説します。

※本稿は、精神科医Tomy著『穏やかに生きる術』(KADOKAWA)を一部抜粋・編集したものです。

 

同調圧力には従わなければいい

ここでは、「同調圧力」について考えていきたいと思います。特に日本社会は同調圧力が強い社会であると言われています。「みんながこうするから、自分もそうする」確かに実感としてもそんな方が多いように思います。

しかし、同調圧力は本質的に自主規制です。圧力を感じて、忖度して、勝手に合わせているだけのものです。強制されているわけではないのです。

ですから同調圧力をはねのけようと思うのであれば、アナタが従わなければいい、ただそれだけのことなのです。

 

同調圧力をはねのける方法

①マイペースなポジションを作る

アナタが今まで属してきたコミュニティ、たとえばクラス、部活、サークル、会社、ママ友グループなどに、こんな人はいないでしょうか?「あの人はマイペースな人だから、どういう意見か聞いてみないとわからないよね」というポジションの人です。

ちょっと一匹狼的な、誰とも群れないタイプの人。普段からそういうポジションに身を置いていれば、周りに忖度することなく自分の考えを貫けるでしょう。

逆に普段みんなの意見に合わせている人が、急に自分の意見を主張し始めたら、周りはちょっとざわざわするかもしれません。

同調圧力は、周りの期待が高い状態とも言えます。最初から同調することを期待されていなければいいのです。そのため普段から「マイペースなポジション」をキープしておくことが大切です。

ではどうすればマイペースなポジションがキープできるか。それは普段から仲良くしすぎないことです。もちろん感じ悪くするわけではありません。礼節は保ちながら、深入りはしないという感覚です。もっといえば、「仲良くしたい相手は厳選しなさい」ということです。

私的には、仲良くすべき相手は、「自分の意見を言うのに気兼ねが要らない」相手だと思います。なんだか言いにくいな、と感じたら距離を適切にとればいいのです。普段から距離感をつかむことが大切です。

 

②時間を稼ぐ

何か意見や行動を求められたときに、即答すると圧力に負けやすくなります。目の前に圧力がある状態だからです。ですから「ちょっと考えてからお返事しますね」と時間稼ぎするのも一つの方法です。

即答しないことは、実は柔らかな「NO」の表現でもあります。即答できないことによって、「問答無用で賛成ではないのだな」と相手に伝えることができるからです。つまり相手の期待値を下げることができるわけです。

 

逃げる

「この職場でがんばってみたけれど、もう潮時かもしれない」「このコミュニティでは上手くやっていけない」という人には、もうあきらめて逃げたくなるときがあります。

しかし、「今までがんばったんだからもったいない」と考えてしまったり、「もうちょっとがんばれば上手くいくかもしれない」と「あとちょっと」を期待したりして、逃げ時を失うこともあります。そこで、どんなタイミングで「逃げる」べきなのかについて考えたいと思います。

私が「逃げる」を考える上で一番大切なのは、「自分の気持ち」だと思います。どっちを選んだ方が自分の気持ちがモヤモヤしないか。まだ見届けたいことがあって、逃げた方が後悔するのであれば踏ん張る。ここにいること自体が辛くて仕方がないので、逃げない方が後悔するなら逃げる。基本はこれでいいと思います。「自分の気持ち」とは、もっと言えば「自分の納得」でもあり、自分軸とも言えます。

しかし、この考え方だけだと危険があります。自分の気持ちは素直に表出するわけではないからです。本当は違うことを感じていても、現状で気持ちを落ち着かせるために、自分の本音に加工をしてしまうことがあるからです。それらについて3つの視点から解説をしていきたいと思います。

 

①サンクコスト

人はそれまで費やした時間や労力が無駄になることを嫌う性質があります。この今まで費やした時間や労力のことをサンクコスト(埋没費用)といいます。簡単に言えば「今までがんばったのにもったいない」ということです。そのため、冷静に考えれば今すぐにでもやめるべきなのに、続けてしまう。そしていつの間にか損失が大きくなってしまう。これがサンクコストの罠です。

 

②正常性バイアス

人は、とんでもない危険な状態になっていても「まあ大丈夫だろう」「何とかなるだろう」と考えようとすることがあります。これを正常性バイアスといいます。

たとえば煙がもうもうと立ち込めていても、誰もが「火事だ」と気が付いて逃げ出すわけではありません。「何か知らないが煙が多いな、まあ大丈夫だろう」と大事になるまで動かない人も大勢いるのです。

職場でも、かなりやばい状況になっても「まあ大丈夫だろう」とぎりぎりまで動かない人もいます。そして気が付けば会社がなくなるだとか大事になることもあります。正常性バイアスが強い人も逃げ時を見失いやすいと言えます。

 

③防衛機制

防衛機制は心理学ではよく用いられる言葉です。簡単に言えば、「現実をそのまま認めると葛藤が生じるため、自分の気持ちに加工してしまう」のが防衛機制です。防衛機制には様々なものがあり、いくつかの防衛機制は現状を正当に評価する妨げになります。

たとえば、有名なのはイソップ童話の「すっぱい葡萄」でしょう。自分には取れない葡萄のことをキツネは「あれは酸っぱい葡萄だから食べられなくていいのだ」と思ってしまう。ここでは、自分を正当化して気持ちを落ち着かせようとする防衛機制の「合理化」が働いています。

これらを踏まえると、「逃げる」判断は遅くなる可能性の方が高いと考えても良いでしょう。①も②も③も、無意識のうちに働いてしまうので、完全に影響を受けないようにすることは難しいかもしれません。「こういったものがある」と知っておくだけでも充分です。

 

いつ「逃げる」と判断した方がいいのか?

私は、「逃げる」ことを意識した時点で、いつ逃げてもよいと思っています。本当に問題がないのなら、「逃げる」などと全く考えもしないはずだからです。

心のどこかに「逃げるとしたら」「逃げた方がいいのかな」などと「逃げる」という単語が湧き出てきた時点で、逃げてもいいのです。

しかし、すぐに逃げる判断もできないかもしれません。そこでこうしてみてください。

「『逃げる』という言葉が頭に出てきたら、出口を決める」

つまり逃げたい気持ちが少しでも出てきたら、「〇〇になったら逃げる」というラインを設定しておくのです。

たとえば、「次のタイミングで昇進できなかったら、転職する」「次同じようなトラブルが起きたら、即仕事を辞める」「次の資格試験で合格できなかったら、あきらめる」などといった具合にです。

出口を決めておくことで、逃げるタイミングを見失わずに済みます。また、最後のチャンスを設けることもできます。

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