同居せざるをえない親と離れたい...大人になっても「親子関係がギクシャクする」原因
PHPオンライン衆知 / 2024年12月9日 11時50分
大人になってからも、親子関係の悩みを抱えている人は少なくありません。同居していたり、介護が必要だったりと、なかなか離れることが難しいケースも多いため、何年もずっと悩みを抱え続けている人もいるでしょう。精神科医Tomyさんの書籍『穏やかに生きる術』より、家族との関係を良好に保つポイントを紹介します。
※本稿は、精神科医Tomy著『穏やかに生きる術』(KADOKAWA)を一部抜粋・編集したものです。
家族との関係性を良好に保つには?
穏やかに生きるために、必要な要素の一つは家族との関係です。物心ついたときに、最初に一緒に過ごす存在は家族。そして家族という関係性はずっと変わることはありません。
親は親、子は子。兄弟は兄弟です。そして家族の舞台となる場所は「家」。アナタが帰る場所でもあります。家族との関係性を良好に保つことは、穏やかに生きるために必須な技術です。
親と距離をとる
「合わない人には期待せず、距離を置きなさい」
これは私が普段から言っていることです。この言葉はかなり評判がいいのですが、必ず出てくる質問があります。
「そうはいっても、同居する親とは距離がとれない。どうしたらいいのか」という質問です。確かに親と距離をとることは難しいかもしれません。まず、親の場合は様々な事情で同居せざるをえないケースがあります。目の前に距離をとりたい人が常にいるわけですから、困るわけです。
しかし、距離というのは物理的な距離だけではありません。「心理的な距離」もあります。たとえば、ルームメイトと同居しているケースを考えてみてください。友達と同居する場合ではなく、ルームシェアの募集で来た相手と同居するパターンを想像してみましょう。
この場合、ルームメイトは「ルールを守って家賃を払ってくれる人」であればいいわけです。お互いの生活に配慮できていればそれでいい。目の前に本人はいるけれど、基本的には干渉しません。この場合は心理的な距離がとれていると言えます。
このように、考え方や対応で、心理的な距離をとることはできるのです。だから親と同居する場合でも、ルームシェアをしている相手ぐらいの認識になればいいのです。
では具体的に、どうすればいいのでしょうか。心理的な距離をとるための鉄則は、「コミュニケーションを減らす」「同じ空間にいる時間を減らす」の2つです。
まずコミュニケーションについてですが、無視をしなさいという意味ではありません。あいさつ程度にして、あまり自分の状況を話さない。相手の状況を聞かない。これがとても重要なことなのです。
相手が親だと、仮に関係性がよくなくても、ついつい話しすぎてしまう。なぜなら、親子の関係性はもともとは距離感が近い。仲が良くないとしても、「親には本当はこんな風に言ってほしい」「本当はこんな態度をとってほしい」という期待があるはずです。
距離感が近いからこそ、期待が強くなり、相手が期待通りではないと憎しみすら抱いてしまう。これが親子における仲の悪さの正体です。
だから、親相手だと自然と話しすぎてしまうのです。ですから「もし相手がただのルームメイトなら、ここまで話すだろうか」と考え、話しすぎないようにしてください。
もう一つの方法は「同じ空間にいないようにする」これも大切です。同じ屋根の下で暮らすから、距離がとれないといいますが、さすがにワンルームで同居というケースはあまりないと思います。
たとえば隣の部屋にいるだけでもいいのです。また家にいるタイミングをずらすのも良い方法です。寝起きの時間がずれていれば、それだけでも同じ空間にいる時間を減らすことができます。
また、親が起きてきたら仕事に行くとか、買い物に行くとか、用件をつくることでも同じ空間にいる時間を減らすことができます。「一緒には住んでいるけど、お互い拘束、干渉しない環境」にしてしまえばいいのです。
これらの工夫を最大限組み合わせれば、同居している親でも離れることはできます。ただ、いきなりこんな環境に切り替えると、親が怒り始めることも考えられます。少しずつ、少しずつ進めていってください。
親との距離感が難しい理由
前項で、「親との距離感」というテーマが出てきました。大変重要なテーマなので、少し掘り下げていきたいと思います。親との関係性で悩む人は案外多くいまして、しかも若い頃だけの問題ではなくて、壮年期、中年期になっても悩むのです。
お悩み相談として持ち込まれることもありますし、実際に患者様の診察をしていてもよく見受けられます。私自身も、既に45歳になっていますが、母親と話すときに上手く距離がとれていないなと感じることがあります。
その原因は、「親に認められたい」という気持ちではないかと思います。
親は幼少期の子供にとっては絶対的存在です。強く、自らを庇護してくれる存在でもあり、一方で厳しく、世の中のルールを教えてくれる存在でもあります。親のもとで育つうちに、子供は自然と「親に認められたい」という気持ちを抱くのです。
しかし、親も誰かの子供であり、絶対的に正しい存在ではない。一人の人間にすぎないわけです。
ですから、どんなに素晴らしいことであっても認めてくれるとは限らない。それどころか、親より子供の方が、よっぽど人間性ができているなんてこともあります。
それだといつまでたっても、親子間の関係性は変わりません。親は親、子は子。親子がひっくり返ることはない。二人の関係性は変わらないので、どうしても「親に認められたい」という期待が顔を出すことになります。
頭では「この人に認めてもらっても仕方ないよな。認めようとはしないよな」とわかっていても、親と話すとどうしてもイライラしたり、感情的になったりしてしまう。これは親への期待がどうしても顔を出してしまうからなのです。
また「親に認められたい」という感情はやっかいで、自分の気持ちと行動を裏腹にしてしまいます。たとえばこのような例があります。母親がいわゆる「毒親」で、自分の価値観や自分の都合ばかり子供に押し付けようとする。子供は充分母親の性格をわかっていて毛嫌いするんだけれど、電話がかかってくると出てしまう。家にやってくると玄関を開けてしまう。
こういうときの対処方法は、改めて「親は絶対的に正しい存在ではない」と理解すること。そして、前項でも伝えたように、心理的距離をとること。物理的な距離がとれていても、心理的距離をしっかりとることを意識してください。
最大の親孝行ってなんだろう
時々「親孝行がちゃんとできていない」というご相談をいただくことがあります。そのたびに思うのが、「ああ、この人は親を充分に大切にしているんだな」と。
そう、親を大切にしていなければこんな悩みが出てくるわけがない。だからきっとこの人は、もう充分親孝行できているのです。親を大切に思うこと、それが何よりの親孝行なのです。
そこからさらに親孝行したいのであれば、やることはたった一つ。「一緒に過ごす楽しい時間を増やす」これだけです。
無理をしてまでする必要はありません。アナタが無理をして、親との時間を作っても、きっとあまり喜ばないでしょう。「無理させている」という気持ちが出てきてしまうからです。
ですから私は、「時々ごはんを一緒に食べる」。これぐらいが一番素敵な親孝行だと思っています。
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