個人の起業家が「競合の少ない市場」を狙う2つのリスク
PHPオンライン衆知 / 2024年12月9日 11時50分
自分の商品・サービスの価格決定は、ビジネスの継続にかかわる重要なテーマ。しかし、女性起業家の多くが、相場よりも低めか、同じくらいにとどめてしまっているのが現状です。プライベートも多忙な女性ほど、高単価商品で勝負すべきというのは、起業家育成コンサルタントの吉田淑恵さんです。成功するための価格設定のポイントについて聞きました。
※本稿は、吉田淑恵著『さよならSNS集客』(秀和システム)より一部抜粋・編集したものです。
あえて競合ひしめく「レッドオーシャン」で勝負する
成功した競合がいる分野でビジネスをはじめることは、とくに個人で事業をする人にとっては、効果的な戦略です。
「レッドオーシャン」と「ブルーオーシャン」という用語をご存じでしょうか?
レッドオーシャンは競争が激化している分野を指し、ブルーオーシャンは競合がほとんどいない、またはまったくいない分野を指します。
大企業であれば資金や人材が豊富なので、ブルーオーシャンをねらう戦略も有効ですが、個人のビジネスにとってはリスクが高いと言えます。
ブルーオーシャンをねらうことのリスクは二つあります。
リスクの一つは、過去にだれかがその分野に挑戦したものの、撤退した可能性が高いこと。世の中には、自分だけが思いつくことはほとんどありません。たとえどんなにすぐれたアイデアでも、すでにだれかが挑戦して失敗している可能性が高いのです。
また、競合がいないということは、その分野に見込み客も少ない、あるいはまったくいない可能性もあります。
もう一つは、まったく新しい商品やサービスを提供するためには、顧客にその価値を理解してもらうための教育が必要になること。
たとえば、スマートフォンについて、「携帯電話にパソコンとデジカメの機能がついたもの」と説明されると、そのよさは簡単に理解できます。これは、すでに携帯電話やパソコン、デジカメが普及していたからこそ可能なのです。
しかし、まったく新しい概念を説明するのは困難であり、時間もコストもかかります。このような大規模な教育は、大企業に任せるのが賢明です。
スモールビジネスでねらうべきは、すでに成功している競合がいる分野の「0.5歩となり」です。
競合が成功している分野では、それらのサービスに対する不満が完全に解消されているわけではありません。競合の未解決の不満をあなたが解消することで、あなたの商品のよさが顧客に伝わりやすくなります。
高収益商品で時間単価を上げる
時間単価とは、1時間あたりで稼げるお金のことです。
とくに個人ビジネスでは、この時間単価を上げることが重要です。だれにも平等に1日は24時間、1年365日。しかもママ起業家にとっては、家事や育児もあるので、持ち時間はさらに限定されます。
限られた時間の中で欲しい収入を得るには、「高収益商品」を持つことがポイントです。単純に高額商品で売上を上げることだけに注目するのではなく、コストも視野に入れた上で、最終的に手元に残るお金を大切にすることが求められます。
私が起業初期に、自宅のリビングでアイシングクッキーの講師をしていたころの話です。2時間のレッスンで4000円。3人の生徒さんならば1万2000円。
「時給6000円はかなりいい」と思いませんか?ところが、それは勘違いです。
なぜなら、この計算には準備にかかる時間や材料費が含まれていないからです。1回のレッスンに準備も含めると、約6時間もかかります。
時間単価を考える際には、集客や営業にかかる時間も重要です。
たとえば、SNSでの発信や見込み客とのやり取り、ブログを書く時間なども、すべてがコストとしてとらえられるべきです。
さらに、低価格の商品は数多く売る必要があり、事務作業も増えるので、時間単価が下がる原因になります。
たとえば30万円を1人に売るのに対して、3000円を100人に売る場合を比べると、帳簿をつける件数や入金確認、さらには未入金の連絡などの事務作業は100倍です。
最終的には、高収益商品を選ぶことで、ムダなコストを削減し、限られた時間の中で最大の利益を得ることができるのです。
個人ビジネスにおいては、つねに時間単価を上げるための工夫が求められます。これが成功への道を切り開く大切なポイントです。
値段自体ではなく、価値に対して高いか安いか
値段というのは、それ自体に高いとか安いとかいった評価があるわけではありません。その商品の価値に対して高いか安いかが判断されます。
つまり、単なる数字ではなく、その値段に見合う商品価値があるかどうかが重要なのです。たとえば、5000円という金額を考えてみましょう。
5000円のランチと聞くと、少し高いと感じるかもしれません。しかし、ディナーであれば、同じ5000円でも先ほどよりは高くは感じないかもしれません。
さらに、パスタランチが5000円であれば非常に高いと感じるでしょうが、これが高級な懐石料理であれば、5000円はむしろお得に感じることもあります。つまり、同じ5000円でも、何に対して支払うかによって、その感じ方が変わるのです。
では、値段を上げるにはどうすればいいのでしょうか。このポイントを四つに分けて考えてみます。
【POINT①相場の高いサービスを提供する】
安いと評価されがちな相場の中で勝負するよりも、高い評価を得やすいサービスを提供することで、より高い値段を設定しやすくなります。有形物よりも無形物、とくに塾や講座などの教育型ビジネスなどは、自分の成長を実感できるため、価値を感じやすい分野です。こうした分野に焦点を当てることで、値段以上の価値を感じる可能性が高まります。
【POINT②価値は品質だけではない】
価値を上げようとして、単に品質を上げるだけでは、お客様が求めているものに応えられないことがあります。たとえば、講師業で値段を上げるためにひたすらスキルアップをしても、受講生さんが難しくてついてこられない、なんてこともあります。近所に狭い道が多く、普段のお買い物用に車が欲しい人にとっては、スポーツカーのような高性能な車よりも、軽自動車のほうに価値を感じるのです。つまり、顧客が求めるレベル感も理解し、それに合わせたサービス提供が重要です。
【POINT③価値をしっかり伝える】
あなたのサービスの価値は、相手に伝わらなければ意味がありません。どう感じるかを、相手任せにしないことです。価値を感じてもらうためには、相手にとってどんなメリットがあるのかを伝えましょう。このコミュニケーションができていれば、顧客はその商品やサービスに高い価値を見出しやすくなります。
【POINT④望むところへ連れていく商品を提供する】
富士山の頂上を目指している人に対して、五合目までしか行けないツアーを提供しても満足してもらえません。顧客が理想とする解決した姿を把握して、そこに到達するためのサービスを提供することが重要です。商品が段階的にある場合は、セットで提供することで価値をさらに高めることができます。
このように、値段だけに焦点を当てるのではなく、その値段に対する価値をどう感じてもらえるかを考えることが大切なのです。
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