周囲に気を遣いすぎてしまう...生きづらさの根本にある「幼少期の親子関係」
PHPオンライン衆知 / 2025年1月23日 12時0分
自己肯定感が低く、周囲に気を遣いすぎたり、自分を責めてしまう...その原因は、幼少期の親子関係にあるかもしれません。親子間での愛着形成が、心にもたらす影響について書籍『大人の愛着障害』より解説します。
※本稿は、村上伸治 (監修)『大人の愛着障害』(大和出版)を一部抜粋・編集したものです。
気づくといつも同じことに悩んでいませんか?
あなたはいつも心の奥で「人に迷惑をかけてはいけない」と思っていませんか。問題が起きると「自分のせいだ」と、自分を責めてしまうのではないでしょうか。愛着の問題を抱えている人には、「自分が犠牲になればいい」「自分に全責任がある」といった思考のクセが見られます。
こんなことはありませんか?
□ 「がんばらないと」と自分に言い聞かせている
□ 泣いたら負けだと思っている(だが無性に泣きたくなることがある)
□ 子どもやパートナーの前では絶対に泣いてはいけないと思っている
□ 「自分ががまんすればいいんだ」と思っている
他人には徹底的に気をつかってしまう
職場でも家でも、気づくといつも周囲に気をつかっていませんか。他人といるとき、つねに相手の機嫌を損ねないようにふるまったり、相手が居心地よく過ごせるよう配慮したりしていませんか。以下のような傾向がある人は、小さい頃から親や先生、まわりの大人の表情や反応を見ては、「がっかりさせないように」「相手が喜ぶように」と、気をつかい続けてきたのかもしれません。
□ 職場ではテンションを上げて、いつも元気にふるまっている
□ 人の相談によく乗る
□ 困っている人を見るとつい声をかけてしまう(ほうっておけない)
□ 気をつかわなくて済む人などいないと思っている
□ (小さい頃から)人には徹底的に気をつかう
□ 相手の話をひたすら聞くことが多い
□ 相談してもらえるのは嬉しいけど、すぐしんどくなる
□ 気をつかいすぎて人を引かせたり、イラつかせたりすることがある
□ 他人が叱られていると、自分が叱られている感覚に襲われる
あなたは自分のことが好きですか?
あなたはいまの自分のことが好きですか。自分を「愛されるべき人間」「価値のある人間」と思えますか。自分の存在をポジティブに捉えることができず、苦しむのも、愛着に問題があるといえます。心のなかにある自己像をふり返り、自分自身をどのようにとらえているのか整理してみましょう。
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【あなたならどんなふうに答えますか?】
いまの自分自身についての質問です。愛着に問題を抱える人は高い確率で、A子さんのように答えます。あなたはどうでしょう?
――自分をいたわる、かわいがることができていますか?
【A子】ピンときません。自分をどうかわいがったらいいのか、やり方がよくわかりません。
――いま、自分の味方はいると思いますか?
【A子】いません。ひとりでがんばっています。
――以前は自分の味方がいましたか?
【A子】昔から、自分の味方はいません。人を頼らないようにしてきました。
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<自分を大事にする感覚がわからない>
愛着形成は自己肯定感や自己有用感の形成にも深く関わっています。自分の姿をポジティブに見ることができないと、「自分を大事にする」という感覚も理解できません。どんなに自分が大変な状況でも、自己犠牲的な思考から自分より人を優先し、「人に優しくしなくては」と自分自身の欲求を押し殺してしまいがちです。あなたは他人より自分を優先的に大切にしていますか。
自分は生きていていいという基本的な安心感が乏しい
一般に「愛着」とは、慣れ親しんだものに対する離れがたい心情を表しますが、発達心理学における「愛着」とは、乳幼児と母親など養育者とのあいだに形成される特別な情緒的結びつきを意味します。
・無条件の愛情を与えられることで自己肯定感が育まれる
生まれたばかりの赤ちゃんは「お腹が減った」「おむつが濡れている」など不快な感情を言葉で表すことができません。泣いたりぐずったりすると親が気づき、不快感をとり除いてくれます。
こうした相互関係がくり返されるうちに赤ちゃんは親を「不快や不安から守ってくれる存在」と認識し、親にくっついて安心を得ようとします。このとき親は赤ちゃんの存在を丸ごと無条件で受け入れます。「なにかができるから」「努力しているから」愛するわけではありません。
乳児期から3歳頃にかけてこうした無条件の愛情を与えられると、子どもは自分を「生きる価値のある存在」「愛されるべき人間」と認識するようになります。この感覚が基本的な自己肯定感の土台となるのです。
どこかでつまずき、自分をきらいになってしまった
親子間で愛着形成がなされていると、自分自身を肯定的に捉えられ、存在していいかどうかを意識することなどありません。しかし、愛着形成が不十分だと、「自分には生きる価値がある」と思うことができず、安心して親に甘え頼ることができません。このように愛着障害は子どもに診断される障害で、虐待などの逆境体験により愛着が形成されなかったときに生じます。本来は大人に向けられる概念ではありません。
ただ、愛着になんらかの問題を抱えたまま大人になり、「自分が生きていてもいい」という基本的な安心感が乏しい人もたくさんいます。こうしたケースでは、逆境体験が皆無ということも多いのです。
そのような人たちは、自己肯定感が乏しく、基本的安心感をもつことが困難です。つき合う相手により安心感が大きく変化する、また年齢を重ねるほど、安心感が目減りしていくのも特徴です。成長過程のどこかでつまずき、「自分は愛されていない」「自分はいらない存在」「自分はきらい」と思うようになってしまったのです。
(※)愛着関係がしっかりと育まれている場合、「自分は生きていてもいい」という感覚は、当たり前なので意識されることすらないもの。小さい頃から現在まで、「自分は生きていていい」といった感覚が希薄で、漠然と不安に感じることが増えていたり、友人、パートナーなど対人関係によって、心持ちに大きくムラがある人は、愛着の問題が大きく関係している可能性がある。
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