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エントリーはたったの5社...コロナ禍の就活で明暗を分けた学生の“しごと観の差”

PHPオンライン衆知 / 2025年1月14日 11時50分

水野臣介著『人材ビジネス』

現在主流となっている、オンラインと対面の「ハイブリッド型就活」。新型コロナウイルス感染症の流行によって、就活スタイルは大きく変化しました。画面越しでは伝わりにくいコミュニケーションの難しさ...短期間で内定を勝ち取った学生の「しごと観」の変化と、採用する企業に求められる「採用倫理」とは?

人材派遣会社の営業マンを経て業界専門誌『月刊人材ビジネス』を発行する株式会社オーピーエヌの代表取締役社長へ。20年以上にわたり人材ビジネス業界の変遷をウォッチし続ける水野臣介氏が解説します。

※本稿は、水野臣介著 『人材ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)より一部抜粋・編集したものです。

 

コロナ禍で変わった「しごと観」

就職活動も時代とともに大きな変化を遂げてきました。

特に新型コロナウイルス感染症の流行による影響は大きく、求人企業の採用活動のスタイルや学生の就職活動の方法、ひいては企業倫理や学生の「しごと観」にも大きな変革をもたらしました。日々接している若者たちからも、それを感じます。

私が経営する出版社には、学生アルバイトが常時数名います。

大学2年生で入った学生スタッフが3年生になり、緊張した面持ちで就職活動を始めます。そして4年生の秋口までに内定をもらい、笑顔になっていく過程を見守ってきました。

今でも印象に残っているのは、学生アルバイトAさんの就職活動の仕方です。ほとんどの学生がネット情報に振り回されながらエントリーシートを100社以上に乱射している中、Aさんはコロナ禍で分断された生活環境を逆手に取り、自分自身の「内省」を始めました。

「何がやりたいのか」「何ができるのか」「自分の強みは何なのか」、自分とじっくり向き合い、自分にとっての入社基準を確立したのです。

その基準は、「企業理念などから読み取れる社会貢献の意識が高いか」「事業内容が自分の好みか」「通勤時間でモチベーションが下がらないか」などといったものでした。そうして絞り込んでいった結果、実際にエントリーすることになった企業は5社。エントリーから内定取得までの期間はわずか3ケ月でした。

信念に基づいたAさんの就職活動には、本当に頭が下がる思いがしました。コロナ禍を機に、学生のしごと観は大きく変わったのだと思います。

ちなみにAさんは、学業が優秀で3年生の内にすべての単位を取得して繰り上げ卒業し、入社までの1年間はアルバイトとして当社をかなりサポートしてくれました。

 

コロナ禍で変わった採用倫理

コロナ禍で変わったのは学生のしごと観だけではありません。企業の採用倫理もその影響を受けました。

現在に至るまで、企業は採用活動を通して熾烈な人材獲得戦を繰り広げてきました。そこにはさまざまな課題が存在しています。

そのひとつが、「候補者に対しての不合格理由はどれくらい詳しく伝えるべきなのか?」という問題。現在、細かいメジャメントは存在しません。不採用の理由を詳細に伝えるべきでしょうか。基本的に、不採用通知を受け取れば、人は落ち込んだり傷ついたりするものです。1通ならまだしも、もし40通も来たらどんな気分になるでしょうか。私なら現世から逃亡したくなります。

例えば、Aさんと同じくコロナ禍で就職活動を強いられた学生スタッフのBさんは、何十社ものZoom面接で不採用が続いていました。

「画面越しの15分で、自分の存在を否定された」「ありきたりな定型文で断られた」――4年生の年末になっても内定は出ず、年が明けるころにはすっかり顔色も変わってしまいました。そのうち、「もう何も感じない」と言い始め、接するたびにこちらまで辛い気持ちになりました。

確かに、採用側の企業にもコストパフォーマンスの問題があるでしょう。しかし、相手は社会を知らない学生です。厳しい世の中の洗礼を浴びせるという考え方もあるかもしれませんが、私は違うと思います。効率や結果を追い求めた結果、企業としての「倫理」や「規範」が後回しになっているように見えるのです。

もちろん、不合格理由などを詳細に伝えて、相手がさらに傷ついてしまうという可能性も十分ありえます。正解はまだ見つかっていません。しかし、嘘と建前をやめ、誠意をもって正直な態度を示すだけでも、不採用者は通知を受けた翌日から気持ちを切り替えて頑張れます。

多くの企業が「当社は製造業なので理系の成績を選考基準にします」「インターンシップは採用の評価基準です」などと明示する日は来るのでしょうか。企業倫理においては、「採用活動=不採用活動」という意識が求められるような気がします。

ちなみにBさんはその後、数社の内定を勝ち取り、笑顔を取り戻して大学卒業まで当社で頑張ってくれました。

 

就活スタイルの変遷

大学生の就職活動に大きな変化をもたらしたのは、やはり2020年に発生した新型コロナウイルスの流行です。オンライン面接や合同説明会の中止など、多くの学生が前例のない環境で就職活動をスタート。求人企業は暗中模索の中、新卒採用者の獲得に果敢にチャレンジしました。

ここからは、コロナ禍の前後で変わった就活スタイルについて見ていこうと思います。

【1.コロナ禍前の就職活動(2019年まで)~紙からネットへ~】

日本の就職活動は、大学3年生の夏ごろから本格的に始まります。

従来の流れでは、多くの学生は大学のキャリアセンターを活用し、就職説明会や企業のインターンシップに参加することからスタートしていました。大手企業ではリクルーター制度が活発に利用されており、大学ごとに指定されたリクルーターを通じて学生とコミュニケーションをとっていました。

合同企業説明会や企業が個別に開催する説明会が重要な役割を果たしていることが一般的でした。私もそうでしたが、こうした場で直接企業担当者と接触することが多く、対面でのコミュニケーションを中心に就職活動をしていました。

提出するのは紙のエントリーシートや履歴書。面接も対面で行われることが主流でした。就職活動の情報収集は、新聞や雑誌、各大学のキャリアセンターで提供される資料が中心でした。

その後、2000年代初頭から、紙媒体中心の情報収集がインターネットへと徐々に移行し始めます。

リクナビやマイナビといった就職情報サイトが普及し、就活生はオンラインで企業にエントリーシートを提出するようになりました。また、企業の採用情報や説明会情報もウェブ上で確認できるようになり、就職活動の手続きの大部分がインターネットを介して行われるようになりました。それでもコロナ禍前までは、企業説明会や最終面接などの重要な場面で、対面でのやり取りが基本でした。

【2.コロナ禍の就職活動(2020〜2022年)~オンライン就活の急速普及~】

2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の流行は、日本の就職活動に大きな影響を与えました。

特に2020年の大学4年生は、突然のパンデミックの影響で従来の対面型の活動が制限され、オンラインへの移行を余儀なくされました。

企業説明会や面接は、ほぼすべてオンラインで行われるようになり、ZoomやMicrosoft Teamsなどのビデオ会議システムが主流となり、学生は自宅からオンラインで企業とやり取りをするようになりました。これにより、移動時間が削減され、地方の学生でも都市部の企業にアクセスしやすくなるという利点が生まれました。

しかし一方で、オンライン特有の技術的トラブルや画面越しでは伝わりにくいコミュニケーションの難しさも浮き彫りになりました。

オンラインでの採用活動が急速に普及したものの、企業も学生も当初はその対応に苦労しました。

特に、対面でのやり取りに比べてオンライン面接では人柄や雰囲気を感じ取りにくく、学生にとっては自己アピールが難しく感じられることが多かったようです。また、企業側でも採用基準を見直す必要が生じ、人事部門のオンライン面接対応力が問われました。

オンライン就活では、従来のインターンシップや会社見学が中止されることも多く、学生が企業の内部事情や職場環境を知る機会が限られるという課題もありました。中小企業の中には、オンライン対応の遅れが響き、採用活動そのものが停滞するところもありました。

【3.コロナ禍後の就職活動(2022年以降)~ハイブリッド型就活の定着~】

2022年以降、コロナ禍が収束するにつれ、日本の就職活動も対面型の活動が徐々に再開されました。しかし、完全に以前の形に戻ったわけではありません。オンラインと対面の「ハイブリッド型就活」が現在では主流となっています。

企業説明会や一部の面接はオンラインで行われつつも、最終面接や重要な局面では対面でのやり取りが復活しました。これにより、学生はより柔軟に就職活動に参加できるようになっています。企業側も全国の学生に対して採用の門戸を広げることができるようになりました。

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