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親子関係に悩み、死がちらついた...「いい子キャラをやめた」途端に解けた思い込み

PHPオンライン衆知 / 2025年1月22日 12時0分

安藤大作

大谷翔平選手の活躍をニュースで目にしたり、身近なところではできる先輩が仕事で結果を出す姿を見たりすると、「すごいなー」と思いつつ、「でも自分にはできないよ」と否定的になり、努力を諦めてしまうことはあります。

あることが起きて、「できる」と思える人と「無理だな」と諦める人の差は能力だけではなく、出来事に対しての捉え方が影響します。そう言っても、ネガティブな人は「自分のパーソナリティだから無理」と思いがち。でも、本当に自分の人間性が影響しているといえるでしょうか?

本稿では、幼少期から両親と離れて暮らし、親子関係の悩みから自殺一歩手前まで追いつめられた経験を持つ、株式会社安藤塾代表取締役の安藤大作さんが、「本当の自分らしさ」について語ります。

 

「自分らしさ」の正体は「欠けた心」でしかない

私は誰にでも可能性はあると考えています。なぜなら最初から「できない」とマイナス思考で生まれてくる人はいないからです。成長過程でうまくいかないことや、他人からの心ない言葉によって自信を失い、気力も落ち、自分を信じられなくなっていくことが原因で自分の心が欠けてしまうだけなんです。

なぜ、可能性は誰にでもあると言えるのかというと、幼少期から形成される「心のクセ」が影響しているからです。誰もが生まれた時は思い込みを持っていません。何の歪みも汚れもない、きれいな丸い球のような存在です。

しかし、幼少期に多かれ少なかれ問題を抱えると心に欠けたものを感じ、不安や恐怖感が残ってしまう。本当はそう「思い込んでいるだけ」なのに。

人はこうした分離不安を解消しようと自分のキャラクター作りに励み、心の安定を図ります。「こういう風に振る舞えば、人から信頼される」といった、特性のような心のクセを身につけていくわけです。

習慣化すると、心のコブのような存在になり、「自分らしさ」と置き換わってしまう。その中で自分の可能性を決めてしまうので、本来持っている可能性を見失ってしまうのです。

その考えに至ったのは、私の実体験にあります。今でこそ塾や保育園を経営し、日本PTA副会長や全国学習塾協会会長などを歴任するまでに至りましたが、人生のある時までつねに不安や恐れがあり、寂しさにあふれ、劣等感で苛まれていました。

 

いい子を演じ続けた人生の中で死がちらついて...

私は、幼少期からある事情で両親と離れて暮らす生活をしていました。母の知人に預けられ、親が身近にいないことで大きな不安を抱えていたのです。「なぜ、親と一緒に暮らせないのか」「私は捨てられたのか」と。

だけど、「つらい」「寂しい」と嘆いても何も変わりません。私は感情を抑えこみ「頑張るしかない」と決意して、自分が頑張れば「親に認められる」「愛される」と思い込んで、勉強もスポーツも頑張り続けるいい子でいました。

でも、大学生の頃になると「いつまで頑張ればいいんだ? 死ぬまでなのか?」と思いが至った時、ポキっと心が折れ、「もう、死のう」と思い、嵐の中、街をさまよいました。

 

頑張り屋の自分を脱ぎ捨てた瞬間に可能性が拓けた

死を踏みとどまって家に戻った後、気づくとため込んだ感情をノートに書き殴りました。「もっと楽に生きたい」「親に愛されたい」と。気づけば涙が出てきて、ノートは4冊、5冊と積み重なっていたのです。

それまでは正直な気持ちを親にぶつけたら、「嫌われるんじゃないか」といった怖さがあり、いいところを見せるしかなかった。でも、これ以上、頑張り続ける人生はきつくて、母に思いを伝えるしかないと意を決して、「会って話がしたい」と電話で懇願し、家に来てもらいました。

そこで、思いのたけを吐露すると、母は「近くにはいられなかったけど、いつもあなたのことを考えていた」と話してくれました。そこで初めて、頑張らなくても愛されていると、肌で実感したんです。そうしたら、「頑張ることでのみ自分でいられる」という洋服を脱ぐことができました。頑張らないでもいい自分を知れて、死ぬこともないと気づけたんです。

 

「今の自分がすべてではない」と気づくことが第一歩

つまり、「自分はこういう人間だ」「こうあるべき人間だ」と、思い込んで考え行動することで保っていた自分は、洋服を着た1つのキャラクターであって、本来の自分ではないと気づけたわけです。この雷に打たれたような経験で、私は自由になり可能性が広がりました。

そこで、「服を着た自分もいて、それは本当の自分ではなくて、生身の自分もいる」考えを広め、根底として「誰しも可能性がある」と問いかける人間教育を通して子どもの学びをサポートする塾を開きました。その後、保育園などを開設して、この考えを浸透させました。教育を変えようと働きかけると、国政に関わる委員会にも選出され忙しい毎日を送っています。こんな未来は予想できませんでした。

私の経験を読んで、「思い込みという心のクセを外すのは、なんて大変なことなんだ」と思いましたか? でも、これは私が極限まで行き詰まった状態で何層も重ね着した服だったからで、着ている服の多さ(クセを外すレベル)は人によって違います。

例えば、軽度な人。少し気分が落ちたりすることがある程度の人なら、「今の自分がすべてではない」、つまり、本当の自分は自由でいられると知るだけで心は軽くなり、自分の可能性を信じてチャレンジする姿勢が前向きになります。

もう少し人生がうまく回らないと実感する人は、「うまくいかない、苦手や不安がある」と感じるなら、どんな時にそう感じるかを振り返ってみると、パターンが見えてきます。

「あの仕事の時」「あの部署の係長」など紐解いていく、客観視して原因がわかればそれで十分。その苦手な対象について、同僚や上司に話してみると物事を多面的にみられるようになり、客観的に理解できるようになります。

 

服を着続けるのも脱ぐのも自分次第

「身につけた服を脱ぎ捨てよう」といっているわけではありません。現代社会はまとったキャラクターの服なしに生きていけないからです。会社でのポジションや培った個性を着て、日常生活に折り合いをつけるのは、生きていく上では必要なことでもあります。服も着ているけれど、生身の自分もいる。自分という人間は「服を着た自分だけではない」と思えたら、それでいい。

心のクセを知った上で、どうするかは自分次第。どの道を選択するかも自由です。例えば、よくすねる管理職の人がいたとします。彼はすねることで、皆から気にかけてもらうことをよしとしています。でも、どこかで自分は心底、周囲から好かれているわけではないことに気づいています。

すね続けるか、変えていくかという選択肢があります。このままであれば、他人は彼がすねないように気を遣って接し、褒めたりするでしょう。でも、心の距離は縮まりません。

心を入れ替えて、彼が自分から周囲を気遣い行動する人に変われば、「すねた人」のレッテルははがれ、心の距離が縮まり、良好な人間関係を築けるかもしれません。でも、今までの自分を手放したら、「誰も気にしてくれないかも」といった、不安や恐怖感もあるでしょう。どんな未来になるかはわかりませんが、少なくても人間関係の信頼や安心といった可能性は広がります。

 

自分という存在の捉え方次第で、可能性はいつでも誰でも変えられる

チャレンジするのはムダじゃないか。人間関係をよくしたいけど、性格的に無理だろうと、可能性を狭めているのは自分です。逆もしかりです。「今の自分だけが自分じゃない」と知っていれば、心が軽くなって、日々を過ごしていけるはずです。

少なくとも「死のう」とまで思った私は、それを知ったことで色のない人生がカラフルな人生に変わり始めました。自分の可能性は誰でも、いつでも変えられる。これは嘘偽りのない思いです。

新たな年がスタートし、これまで諦めかけていた夢や目標があれば、心機一転の気持ちで、ぜひ自分の可能性を信じ挑戦してみてはいかがだろうか。

 

【安藤大作(あんどう・だいさく)】
株式会社安藤塾代表取締役 https://www.andodaisaku.net/

1969年三重県伊勢市生まれ。幼少時、両親が離婚。その後、母親と離れての生活、預け入れ先での大家族の環境で育つ。その過程の中で、自身の心の闇と葛藤し、自殺一歩手前までに追いつめられる。そこから自分の内面に向かう旅を始め、多くの真理と愛に気づく。

人間・人生の素晴らしさ、誰しもが無限の可能性をもっていることを伝えるために、 1991年、信州大学卒業と同時に8畳一間の看板もパンフレットもない状況での安藤塾を開設。不登校、不良問わず、子どもたちに熱心にかかわり、合格実績ほか子どもたちの人間的に成長することから、 口コミを中心に多くの生徒が通うようになる。その後、400人近い生徒を1人で指導し、地域の有名塾になる。

2002年、新たに講師を加え、安藤塾として看板を掲げる。現在は、十数校舎まで拡大し、2000人の生徒を有する県下トップのクラスの塾グループとなる。

また、学習塾のほかに、保育園、学童保育、サッカークラブ、海外留学など、さまざまな教育活動を展開。 氏の考え方や指導法は、県下でも高く評価され、多くのマスコミにも取り上げられている。

 

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