プロが語る「災害時、親がすぐ迎えに来れない」を想定した防災教育とは?
PHPオンライン衆知 / 2025年1月17日 7時0分
地震、台風、水害。災害関連のニュースが引きも切らない昨今の日本。備えておいたほうがいいことはわかっているけど、つい後回しにしてしまう......。
仕事や子育てに追われていればなおさらでしょう。
今回、防災士やキャンプインストラクターの資格をもつママキャンパー3人組「CAMMOC(キャンモック)」の著書『ラクして備えるながら防災 フェーズフリーな暮らし方』の刊行を記念して「防災アナウンサー」こと奥村奈津美さんとの対談が実現。
著書では、"いつも(平常時)"と"もしも(非常時)"のフェーズをなくす「フェーズフリー」の考え方のもと、理想的な暮らしと防災の両立を提案しています。
奥村さんもまた、数年前に防災に関する著書を出版しています。フェーズフリーアワード2024では審査員を務めました。第3回は、子育て中のおふたりが考える「子どもの命を守る」ことについてお話しいただきました。
“引き渡さない訓練”もしてほしい
【マミ】災害時、家族が一緒にいられればいいのですが、そうとはかぎりませんよね。子どもについては、学校や地域の取り組みも気になっています。
【奥村】うちの子はいま5歳ですが、園では月に1回の避難訓練に加え、子どもたちの安全を守りながら保護者に引き渡す"引き渡し訓練"も行われていますね。できれば、"引き渡さない訓練"もしてもらえたら、と思っています。災害の状況によっては、保護者が帰宅困難になるなどして、すぐに園に駆けつけられないこともあります。3日は園にとどまる想定で、お泊り訓練などをやってもらえるといいなと......。
【マミ】息子が通う小学校では、以前お泊り体験として体育館に泊まるというのをやっていたようです。
【奥村】学校の体育館が避難所になることも多いので、そうした体験活動をおこなう学校もありますよね。ダンボールでベッドを作って寝てみようとか、非常食を食べてみようとか。
【マミ】安全面を考慮してか、息子の学校では泊まることはしなくなりました。学校によって事情は様々あり、それもまたむずかしいところですね。
「知る」を「できる」にする防災教育
【奥村】学校での訓練や備えは、防災に熱心な先生がいらっしゃるかどうかで左右される傾向にありますね。私は防災の講師として子どもたちにお話するため学校にうかがうこともあるのですが、時間割のなかで防災の授業のために1時間でも取るのがむずかしいと聞きます。
【マミ】大人になると自分から情報を取りにいかないと知ることができなくなるので、子どものときにそうやって授業で、みんなで知るという経験があるといいですよね。奥村さんの授業、子どもたちの反応はどうですか?
【奥村】中学生や高校生にもなると、私が話したこと以上を感じ取ってくれますね。災害リスクの高い危険な地域に住んでいても、授業ではじめてハザードマップを見たという子も多いです。でもマップを見ながら「このあたりは、3階まで水没するかもしれない」と知ると、すぐに意識が変わるのがわかります。被災地でも避難できた事例をたどっていくと、子どもたちが学校で防災を学んでいたことで対応できたという話も聞くので、防災教育がもっと浸透するといいなと思います。
▲ハザードマップでは想定浸水深が色分けされており、浸水リスクを知ることができます。(出展:国土交通省ウェブサイト)
モノを備えるより大事なこと
【マミ】「知る」のあとに「共有する」ことも大切ですよね。授業でこんなことを学んだよ、と親子で話をするだけでもきっと変わってきますね。メディアで防災の特集を見ていても、防災グッズばかりが取り上げられることが多いですよね。モノは、買うというすぐアクションにつなげられるのでやはり実感しやすいのでしょうね。
【奥村】モノがあっても保管場所がわからなかったり、家が潰れたりすれば使えません。「知っておくこと」が何よりの備えになると思います。私もSNSではグッズを紹介すると多くの方に届くことも多いですが、あくまでそれは入口。本当に知ってほしいのは、災害が起きたらどういうことが起きるのか、ここはどういうリスクがあるのかということ。そして知識と心構えが、自分と家族の命を守るということです。
激甚災害から子どもを守りたい
【マミ】家族といっても大人と子どもは違うし、男性と女性も違う。当然、ものの見方や必要なものも異なりますよね。自分にはコレが必要だけど、相手には何が必要なのかなと、自分以外の人に興味をもつことが防災につながっていくと思います。奥村さんの著書は、パパに向けても書かれていますね。
【奥村】パパにもぜひ読んでもらいたいですね。大切な人の未来のためになることが、防災だと思っています。だから「防災は未来へのプレゼント」であると書きました。
【マミ】私も拝読しましたが、忘れられない一節があります。「たとえ同じ部屋にいても、揺れている中、子どものもとへ駆けつけて抱きしめることはできないと思って対策する必要があります」というところ。
【奥村】子どもを思えばこそ、いざというときは「駆けつけて守る」という考えになると思うんです。でもそれは、震度5レベルぐらいを想定しているから。東日本大震災では最大震度7を観測していますが、そうなるとエネルギーがまったく違うんです。家のなかにいても家具が倒れてくるし、耐震基準を満たしていない家だと緊急地震速報とともに屋外に出ないと家の下敷きになる恐れもあります。そうするとほんの2、3メートル先に子どもがいてもなすすべがないんですよね。
【マミ】子どもの命を何としてでも守るため、子どものことをいつも心から考えて備えている人からしか出ない言葉だと感じました。
社会で子どもを守るという意識
【奥村】子どもに教えておいたほうがいいこともたくさんあるんですよね。いまは、笛を吹けない子が多いそうです。
【マミ】幼稚園や保育園でも、うるさいとクレームがくるかもしれないという理由で、笛を吹かせないようですね。私の息子は、持ち歩き用の防災ポーチにホイッスルを入れていますよ。
▲マミさんの子ども用防災ポーチ。休日はもちろん、学校へ行くときもランドセルに入れている。
【奥村】普段から遊びの感覚で笛を吹く練習をしておくなど、災害時に使うものに慣れておきたいですよね。うちでは枕の下にヘッドライトを挟んでいます。懐中電灯は地震の揺れで飛んでいって割れてしまうことがあると思い、今の我が家ではこれがベストだと思っています。寝る前には、ヘッドライトの明かりで絵本の読み聞かせをしています。意外といいですよ。
【マミ】キャンプシーンでいうと、少し前までは子どもにライフジャケットを着せておくのはやりすぎ、という空気があったんですよね。でも、それも薄れてきたと感じます。
【奥村】おしゃれなものも増えましたよね。海の家など、貸し出してくれるところもあります。
【マミ】そういうところに、社会の目の変化を感じます。
【奥村】みんなで子どもの命を守ろうという意識は徐々に高まってきていると感じますし、今後ますますそうなってほしいですね。
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