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「じっと我慢して、上司の異動を待っています」職場の士気を下げる経営幹部の存在

PHPオンライン衆知 / 2025年1月16日 11時50分

組織と仲間をこわす人

誰もが、不安や不満に覆われた組織で、大事な人生の大半を過ごしたくはないだろう。もし残念にもそんな境遇に置かれることになっても、自分だけはその「原因」にならない努力をしたいものである。部下を持つミドルが、傲慢なる「ヒラメ上司」にならないためには? そのヒントを書籍『組織と仲間をこわす人、乱す人、活かす人』よりご紹介する。

※本稿は、平岡祥孝著『組織と仲間をこわす人、乱す人、活かす人』(PHP新書)の一部を抜粋・再編集したものです。

 

傲慢なる「ヒラメ上司」になっていませんか?

職場で親しくお付き合いさせていただいた先輩が退職されたり、仕事が縁でご厚誼いただいた方々が、たとえ栄転であっても転出されたりすると、どうしてもお目にかかる機会が少なくなります。会うは別れの始めとはいえ、心さびしいものです。

企業訪問や高校訪問を通して感じるのは、支社長・支店長や校長が交代すれば、組織の雰囲気が変わる場合が多々あるということです。良い意味でも、悪い意味でも。それは、私自身の仕事人生に照らしても首肯できるものです。

公私ともども懇意な間柄である某本州系企業の札幌支店管理職の方(仮にX氏とします)と最近会食をしたときの話です。3月に支店長が代わってから支店の雰囲気が一変したそうです。それを可能な限り再現してみましょう。なお、Yは私。

Y「どう変わりましたか」

X氏「ともかくエリート風を吹かせて、支店の人間を見下げます。雰囲気は暗くなりました」

Y「初めての札幌勤務なら、前支店長との引き継ぎを十分に行い、赴任後は副支店長と相談しながら支店経営や業務遂行に当たるものでしょう」

X氏「普通はそうです。でもね、引き継ぎは形だけ。着任早々から副支店長の言には耳を貸さず、前例踏襲を全否定して『俺流』で営業成績を上げていくと豪語しています。年長の副支店長を叱責します。私も早々にたたかれました」

Y「たとえ立場でものを言う場面であっても、長幼の序はわきまえるべきでしょう」

X氏「あいさつ回りはするものの、これまでの経緯も知らずに大言壮語するので、結構評判が悪くて。そのくせ本社の役員にはもみ手でうまく取り入っていますよ」

Y「典型的なヒラメ上司だ。それも自信過剰と傲岸不遜のハイブリッド型。上昇志向が強い人望なきリーダーが、私心を持って結果だけを求めると、支店の方々は犠牲者」
X氏「毎日が憂鬱です。今はじっと我慢して、支店長の異動を待つだけです」

その時私は、映画「踊る大捜査線 THE MOVIE2」で真矢ミキさん扮する沖田管理官を思い出しました。警視庁から赴いた沖田は、特別捜査本部を指揮して湾岸署の署員たちを命令と統制で押さえ込もうとするものの、結果、捜査は行き詰まり更迭される羽目に。

誤ったリーダーシップを発揮するならば、部下は処世術として面従腹背で対応するかもしれません。しかし、そこには意思疎通の壁ができてしまい、真のフォロワーシップは存在しません。やはり人は心で動くものです。

 

部下に寄り添う、人を癒すことができていますか?

ある大手企業で研修を担当している管理職の方と食事を共にしたときに、氏は「自分の経験から少し強い口調で助言すると、青菜に塩です」と、若手社員の教育の難しさを語っていました。

「順序立てて話しても、本人が追い詰められたと捉えたら、もうお手上げです」との嘆き節も聞いた次第。一般にストレスへの耐性が弱いとされる最近の若手に対して、心理的ダメージを与えないような指導や助言をすることは、とうとう至難の業の域に入ったようです。

そうは言っても、部下に育ってもらわないと困りますね。上司には、経験値に基づく支援と人望力との二刀流が必要ではないでしょうか。

例えば、仕事で失敗するなどして元気がない部下を励ます場面を考えてみましょう。まずはマイナスの状態からゼロの状態に戻し、可能ならばプラスの状態に引き上げることができる上司が求められます。

マイナスの状態で悩み、落ち込んでいる部下を、いかにして再浮上させていくか。ただ「頑張れ」や「これをやれ」だけでは、無理筋。上下関係にあっては、上司は部下に対して、ついつい説教を垂れてしまいがちです。

部下に反発の姿勢が見て取れたならば、「こいつは理解不足だ」とばかりに、高飛車に強く押し付けようとすることもあるやもしれません。自分は立場が上だという過剰なまでの自信と自尊心があればあるほど、どうしても自らが正解を持っているような気分になってしまいます。むろんそれは錯覚なのですが。

困難に直面している相手に向き合うときには、まず相手を理解して受け入れることが前提となるはずです。相手の心情や葛藤に共感的理解を示すことなく、一方的に助言することは、上司の自己満足に過ぎないと言っても過言ではありません。ちなみに、教科指導や部活動における教員と生徒との関係も同様です。

聞いてもらえるだけでも、人は癒やされるものです。部下の話を途中で遮ったり、大声を出してまくし立てたりすることは厳禁です。命令口調や説教口調ではなく、穏やかな語り口によって、助言や経験談をいかに部下の心に染み込ませるか。ここで、経験値を包み込む人望力の出番となります。

謙虚さを忘れることなく、「あくまでも私の経験では......」「参考になるかどうかはわからないけれども......」等々、ソフト&マイルドなタッチで語ること。そして、「どう思いますか」と逆質問して、納得性の度合いを確認することも大切です。もし納得していなければ、さらに対話を続けるのみ。指導・支援には時間と忍耐が必要になります。

部下への心のこもった寄り添い方も、上司としてのスキルといえるのではないでしょうか。

 

感情労働の価値を認めることができていますか?

ウィズコロナからアフターコロナの状況になって、社会生活が元に戻りつつあることを実感した時期、観光需要も急回復する一方で、観光人材不足が露呈することになりました。

『北海道新聞』朝刊(2023年6月27日付)でも、道内有数の観光地である函館で、各社が模索している新たな省力化策や人材確保策が紹介されていました。

人材不足は教育分野においても例外ではありません。教員不足は地方ほど深刻です。人口減少、少子高齢化に直面している地方にとって、「医療過疎」と「教育過疎」の対策は焦眉の急です。

それはさておき、過日、某教育書籍の編集担当者から取材がありました。そのとき、「教員にとって最も重要な資質・能力を一つ挙げてほしい」と言われました。

この難しい問いには返答に窮しましたが、ここはいつもながらの独断と偏見で一言、「安定性です」と答えました。授業力や指導力の質的水準もさることながら、感情を制御する「感情管理」が教員には最重要であると、私は考えます。

私の恥多き教員経験から考えると、教員としての道を歩んでいくならば、肉体労働・頭脳労働・感情労働の「三位一体(さんみいったい)的労働」が求められると思います。体力と知力の全力投入は当然です。手抜きは見破られるのが落ち。加えて、生徒・学生対教員という共に感情の動物である人間同士の関係性の中では、感情労働の比重は極めて大きいでしょう。

感情労働は、米国の社会学者であるA・R・ホックシールドが提唱した労働概念です。感情労働では、自分自身の感情を制御しつつ、相手に応じた言葉や態度で対応することが求められます。これは、ビジネスの現場、例えば接客業全般によく当てはまることでもあるでしょう。

対面の価値や効果が再認識されるようになりました。言うまでもなく、まずはさまざまなハラスメントを徹底的に排除しなくてはなりません。そして、生徒・学生と教員、あるいは部下と上司の間では、対面型コミュニケーションを通した人間的信頼関係を構築していくことが必要不可欠です。

そのためには、丁寧に接しつつ傾聴第一で。相手の話を途中で遮っては駄目。ふんぞり返って威張らない。大声を出して怒鳴らない。一方的にまくしたてない。クドクド・ネチネチも嫌われますなぁ。ましてや、人格否定や相手のプライベートに踏み込むことは、ご法度でしょう。

好感や好印象こそ、心が通じる第一歩ではありませんか。ただし、感情労働は精神的疲労が大きいことも確かです。ならば、いかに疲労回復を図るか。そうした創意工夫が、これからの時代を生き抜く力の一つなのかもしれませんね。

 

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