雨穴氏が語る『変な絵』大ヒット3つの要因 世界でホラーファン必携と評されるワケ
PHPオンライン衆知 / 2025年1月16日 17時10分
日本国内で著作シリーズが累計120万部を突破したYouTuberの雨穴氏。人気作のひとつ『変な絵』が世界30の国と地域(北米、ヨーロッパ、南米、アジア)で出版が決定。それを記念し、雨穴氏が初めてマスコミの前に登場し、会見が行われた。本が売れない時代に、なぜ雨穴氏の小説は異例の大ヒットとなったのか? その秘密が明かされた。
なぜ『変な絵』はここまでヒットしたのか?
『変な絵』シリーズの特徴は「読者層が若いこと」だという。スマホのゲームやマンガ、アニメに親しんでいる日本の若者・子どもになぜヒットしているのか? 雨穴氏によれば、ズバリ、3つの理由があるという。
【雨穴】まず1つめの理由は「読みやすいこと」です。マンガ・アニメに親しんでいる日本の若者にとって、文字だけの本を読むのは苦痛だと思います。そこで『変な家』では、複雑なトリックやストーリーの要点を説明するための図をたくさんいれています。
特にページ割を重視していて、図はページを行ったり来たりしなくてもすぐに見られる位置に配置しています。学術書なら、前のページに戻ったりする作業があっても仕方ないかもしれませんが、私の小説はあくまでエンターテインメントなので、リーダビリティにはこだわっています。
私は自分の作品を「コミック風小説」または「マンガ風小説」と呼んでいます。私もマンガを読むのが大好きなので、マンガと小説を融合させたかったのです。
もちろん、私のやり方がスタンダードでベストだとは思っていません。本当は若い人にも、例えば横山秀夫さんの小説のような難しい作品も読めるようになってほしいと思っています。そこで、私の本を通して、若い人たちにも小説を読む楽しさを知ってもらい、もっと難しい小説を読むことに挑戦する勇気を持ってもらいたい。それが私の願いです。
たしかに『変な絵』の中身を見てみると、イラストがふんだんに使用されている。普段小説を読んでいない読者にとっては、とても親切な作りで読みやすいだろう。では、2つめの理由は何だろうか?
【雨穴】2つめの理由は「YouTube」です。私はユーチューバーとして、ダンスや料理、長編ミステリーの動画を投稿しています。新刊が出るたびに その本の第1章の内容を動画にして投稿しています。要するに、私は自分の本を宣伝し、その本の面白さを伝えるために、あらゆる技術を駆使しているのです。
雨穴氏がYouTubeに投稿しているミステリー動画は、なんと1000万回再生を超えているものも珍しくない。思わず背筋がゾクッとするような動画は、小説で続きを読んでみたくなるような構成になっている。若い読者を惹きつける重要な鍵となっているのは間違いないだろう。
【雨穴】そして3つめの理由は「私の本がとにかく怖い」ということです。
いま、日本の若者の間でホラーがブームです。しかし、怖いお化けや恐ろしい怪物が登場するような伝統的なホラーではなく、静かで不気味な、不安な気持ちにさせる物語が人気なのです。そして、そのような不安な物語こそ、私が書いているものです。これが、私の本が若い読者に人気がある最大の理由かもしれません。
今の世界は、日本も含めて、悲しいことばかりで大変な時代です。もしかしたら、若い人たちや子どもたちは、そのような不安な空気を感じ取り、それに対処するために、私の小説のような不安な物語に目を向けているのかもしれません。
すべての子どもが心配のない、平和な世界で育ってほしいと願っています。しかし私にはそれを実現する力がありません。その代わり、良い物語を書いて、若い読者を幸せにしたいと思っています。今は、がんばってシリーズ4作目を執筆しています。
なぜ雨穴氏はこのビジュアルになったのか?
会見中にダンスを披露する雨穴氏
雨穴氏のビジュアルに疑問を持っている人は多いだろう。黒の全身タイツに白いお面の出で立ち...。それは、歌舞伎の黒子をモチーフにしているという。グローバルな視点で見ると、ホラー映画のジェイソンを想起する人もいるだろう。
会見では「容姿と作品のシリアスさにギャップがある」という意見も飛び出した。そのお面の下の素顔とは? 雨穴氏は自分のビジュアルについて、どう考えているのだろうか?
【雨穴】このお面を外したら、国民的スターだったり、または犯罪者だったり...ということはありません。
私のビジュアルは海外の人だけなく、日本人にとっても怖いものだと思います。しかし、子どもたちが私のコスプレをしてくれたり、絵を書いてくれたりと、この姿をとても気に入ってくれているようなんです。
さらに、『変な絵』の帯に雨穴のビジュアルを使用したところ、売り上げが伸びたと出版社の方から聞きました。ですので、私自身も自分の容姿について少し悩んでいた時期もあったのですが、いまでは「このままで良いのかもな」と思っています。
これから北米、ヨーロッパ、南米、アジアといった世界30の地域で出版が決定している『変な絵』。出版にあたって、世界の出版社・作家からも賞賛のコメントが寄せられている。一部を紹介する。
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「私が初めて『変な絵』を読んだとき、その複雑なミステリーのプロットとイラストの見事な斬新さにすっかり虜になりました。英国の読者もきっと気に入ると思います。イギリスでの出版が待ち遠しいです」
――イギリス出版社・Pushikin 編集者 Daniel Seton
「素晴らしく革新的.不気味で巧妙。一見つながりのない物語が複雑な結び目となり、それを雨穴が見事に解きほぐしていく」
――G.T.カーバー(全米ベストセラー『マードル』の著者)
「雨穴はこの不気味なホラーで国際的なデビューを飾った。愉快で不気味なイラストや図解の連続と、その作者たちのつながった物語によって、読者は登場人物と一緒に探偵ごっこができる...。この複雑なパズル・ボックスはホラー・ファン必携である」
――Publishers Weekly 誌での最新評価
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『変な絵』は日本の文化が色濃く出たホラーだ。それが、なぜこのように世界に受け入れられたのだろうか?
【雨穴】文章とイラストを組み合わせたスタイルは海外でも珍しいそうです。この新しい小説のスタイルが日本特有のものだったという点。また、現在は『呪詛』など、アジアのホラーが世界的に注目されています。私の本はアジア的な価値観で書かれているので外国の方にも楽しんでもらえたのだと思います。
雨穴氏の「コミック風小説」は、その斬新なスタイルで文学界に新風を吹き込んだ。とにかく読みやすさにこだわったことで、若年層を中心に大きな支持を集め、読書離れが進む現代において、新たな読者層の開拓に貢献している。そして今後は、日本のカルチャーを前面に押し出した作風で、世界中の読者を魅了していくことだろう。
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