つらい股関節の痛みを治すには? 医師が解説する「人工股関節」という選択肢
PHPオンライン衆知 / 2025年2月4日 11時50分
「人工股関節置換術」ってどんな手術? YouTubeで人気の股関節専門医・医学博士の宇都宮啓先生が手術を受けるうえでの注意点を解説します。
※本稿は、宇都宮啓著『股関節の痛みと悩みが消える本』(日東書院本社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
手術療法は最後の手段?
痛みや動きの制限などが生じていた股関節を人工関節に置き換える手術のことを「人工股関節置換術」といいます。つらい症状の大幅な改善が期待できる手術として、治療の選択肢の一つに加えています。あとは、一人ひとりの必要性に応じて検討していただき、最終的に「やはりインプラントは嫌です」ということでやらない方もいますが、「痛みがなくなるなら受けたいです」という方もかなりの割合でいます。
変形性股関節症の患者さんには、安定型と不安定型の方がいます。検査の結果、「あなたの股関節は安定型なので、大丈夫な可能性が高いです」とお話しするケースと、「あなたの股関節は残念ながら不安定型なので、自然な経過でいくとどんどん悪化する恐れがあります」とお伝えするケースがあります。
どちらの場合も進行を食い止めるためにリハビリテーションを一生懸命頑張って、腸腰筋が機能するような状態をつくるのが大事で、そのために注射で痛みを抑えるなどのお手伝いをします。
3つ目が、すでにほかの病院でしっかり治療を受けて機能的には改善しているのに、痛みが取れないケースです。そのような場合、「このままでは症状がこれ以上は改善しない可能性があるので、人工股関節という選択肢もあるかもしれません」とお話しするようにしています。
人工股関節置換術を受ける場合、現在は入院期間も短くなってはいますが、復帰までにはリハビリテーションの期間も必要になります。「このタイミングで治療をしたい」といった希望がある人もいますので、よく考えて決めていただきたいと思います。人工股関節を入れて順調に経過すれば、どんなに軟骨が傷んでいた人でも、痛かった頃のことを忘れるくらい普通の日常生活を取り戻すことができたという声をよくお聞きします。
積極的に人工股関節置換術をおすすめすることはありませんが、どれだけ保存治療やリハビリを行っても反応しないほど炎症が強い、関節のなかが破綻してしまっている、機能的に改善していても痛みが取れない...そのような場合、あまり先延ばしせずに行ってもよいのではないでしょうか。
人工股関節置換術は画期的な手術
人工股関節置換術は、20世紀中に開発された医療技術のなかでも最大の発明の一つとされ、股関節の痛みや機能障害で困っている多くの患者さんに恩恵を与えた画期的な手術です。
1990年代に現在のような形となってからは、25年以上維持できている人が全体の9割以上。骨盤側に設置するソケットの内側にはめて軟骨の役割を果たすライナー部分の摩耗が問題でしたが、改良された現在のポリエチレンライナーは年代のものと比較してさらに5倍も長持ちすると考えられています。
また、近年では筋肉を切らずに人工股関節を挿入する方法が広まり、以前よりも術後の回復が早くなりました。
股関節の後ろ側を切開して行う「後方アプローチ」の方法に比べ、股関節の前側を切開して行う「前方アプローチ」という方法では脱臼のリスクが10分の1になったというデータもあります。脱臼を防ぐため、以前はしゃがむ姿勢、横座り、あぐら、椅子に座って脚を組むことなどは制限されていました。私は主に前方アプローチで手術を行っています。
人工股関節の十分な安定性を術中に確認できた場合、してはいけない姿勢は特に設けていません。私の患者さんで人工股関節手術を受ける方の4割はスポーツ復帰をめざしており、クラシックバレエに復帰された方も多数いらっしゃいます。ただし、股関節に激しい衝撃を与えるスポーツでは、長期的にどのような影響があるか検討する必要があるでしょう。
【宇都宮啓(うつのみや・はじめ)】
股関節鏡視下手術のスペシャリスト。米国におけるバイオメカニクス研究の経験をもとにした、最小侵襲の関節唇修復術を得意とする。人工股関節手術では筋肉を温存して行い、術後にスポーツ復帰が可能。股関節の機能診断とリハビリテーションが最重要と考え実践しており、セラピストからの信頼も厚い。約8割の患者さんは手術を必要とせず、リハビリテーションで満足のいく股関節機能改善が得られている。
2023年2月より開始したYouTubeチャンネル「股関節博士Dr.Jimmy」では股関節に関する情報をわかりやすく解説。これまでに200本以上の動画をアップしている。
YouTubeチャンネル『股関節博士Dr.Jimmy』
https://www.youtube.com/@dr.jimmy-jimmy
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