親を施設に預けるといくらかかる? 経験者が語る「介護費用のリアル」
PHPオンライン衆知 / 2025年2月10日 11時50分
親を介護施設に預けたら、すべて解決する...? 親の介護がはじまる前に考えておくべき「介護費用」について、介護作家の工藤広伸(くどひろ)さんの書籍『老いた親の様子に「アレ?」と思ったら』よりご紹介します。
※本稿は、工藤広伸著『老いた親の様子に「アレ?」と思ったら』(PHP研究所)を一部抜粋・編集したものです。
親を介護施設に預けたら、すべて解決する?
【K】老いた親についてあれこれ悩む必要が一気になくなる、とてもいい案を思いついたんです! 親に介護施設に入ってもらえば、すべて解決しませんか?
【くどひろ】なるほど。それじゃあ、わたしから3つ質問させてもらいますね。この3つの質問にすべて答えられたら、たぶん親の問題は解決すると思います。
【K】3つ答えればいいんですね。どうぞ!
【くどひろ】1つ目。ご両親は、介護施設に入りたいと言っていましたか?
【K】えっ。そんな話は、これまで一度もしたことないですね......。
【くどひろ】2つ目。ご両親は、介護施設に入るお金を準備していると言っていましたか?
【K】親の財布事情は知らないです......。
【くどひろ】最後です。介護施設の種類、知っていますか?
【K】種類? そもそも種類なんてあるんですか......。
【くどひろ】Kさん、残念ですが、問題は解決しません! ご両親とこうした話を一度もしたことがないのに、突然「施設に入ってほしい」と伝えて納得してもらえると思います? 介護施設に入ったとして、毎月どれくらいお金がかかるか知っています?
【K】......。
【くどひろ】ちょっと言いすぎましたね(笑)。Kさんのような介護がはじまる前の人は、「いざとなったら親に施設に入ってもらえばいい」と考えることが多いんですが、それではうまくいかないし、お金が足りなくなる可能性があります。親の財布事情も知らないのに、介護施設に預ければ問題解決というのは、さすがに乱暴すぎって、わかってもらえました?
【K】はい......。名案だと思ったんですけどね......。
【くどひろ】「親の介護は自分のため」とお伝えしましたが、そう思えるためには、金銭面で余裕がないといけませんよね? もう少し言うと、介護費用を親自身に賄ってもらうことが大切ですよね?
【K】そうなれば助かります。わが家は、これから子どもの進学があり、住宅ローンの返済もあるので、親の介護費用まで負担する余裕はとても......。
【くどひろ】厚生労働省のデータでは、約9割の人が介護費用は自分自身で賄っているので、親の収入や貯蓄でなんとかなっているケースが多いようです。もちろん、そうではないケースもあって、父の介護費用はわたしが立て替えました。
【K】親のお金がないと、自分の生活がカツカツになりますね......。
介護施設に預けると月に○円かかる
【K】でも、まだまだ元気な親と介護施設やお金の話はできないですよ。
【くどひろ】今はできなくても大丈夫です。その代わりに、よく参考として使われる介護費用のデータと、くどひろ家の実例を比較しながら、具体的に親の介護にどれくらいのお金がかかるのかを、ざっくりつかんでおきましょう。
【K】ありがたいです。
【くどひろ】公益財団法人生命保険文化センターのデータによると、介護の平均期間は5年1カ月となっています。在宅介護にかかる金額の月平均は4.8万円、施設介護にかかる金額の月平均は12.2万円です。このデータを使って計算すると、生涯で介護費用がどれくらいかかることになりますか?
【K】えーっと......少し待ってください。在宅介護だと5年1カ月×4.8万円で約293万円、施設介護だと5年1カ月×12.2万円で約744万円になりますね。
【くどひろ】その通りです。施設介護は、在宅介護の約2.5倍になる計算です。施設は、やっぱりお金がかかりますね。
【K】2.5倍ですか! かなり違うんですね......。びっくりです。
【くどひろ】もう1つの参考として、わが家の事例もご紹介します。うちの初期の在宅介護費用は、さっきのデータとほぼ同じ月5万円弱でしたが、今の費用は月10万円をこえています。母の認知症が進行して、介護のプロに頼る機会が増えたからですね。
【K】平均の倍ですか!
【くどひろ】正直、倍になるとは予想していませんでした。介護期間も平均の倍以上の13年目に突入して、今もまだ続いています。もしKさんがさっき言ったように、母を最初から介護施設に預けていたら、今ごろ家計は火の車です。
【K】安易な思いつきで大変失礼しました......(汗)。
【くどひろ】いえいえ。母が施設を望んでいなかったこともあり、わたしは運よく在宅介護からはじめられて、それが今も続けられています。これだけ介護期間が長くなっても母の介護費用を1円も負担せずに、母のお金だけでなんとかなっているんです。
【K】それは、すごいですね。ちなみに、お母さんのお金というのは?
【くどひろ】母はパート勤めだけだったので、わずかな国民年金のみです。それだけでは厳しいので、父の遺族年金や亡くなった祖母の相続などを、わたしが手続きしました。それで母の介護費用を賄っています。もし最初から母を介護施設に預けていたら、今ごろは、わたしがかなりの費用を負担することになっていたはずです。
【K】そうなっていたら、とんでもなく重い負担ですね......。
【くどひろ】そうですね。今もありがたいことに介護費用の負担がまったくないので、「親の介護は自分のため」と思えています。この前、「時間軸」のお話をしましたが、お金についても短期ではなく、長期で考える必要があるんです。
【K】短期ならなんとか乗りこえられても、予期せず長期になると、親のお金が足りなくなって、それが自分の財布事情にも直結してくるわけですね。
【くどひろ】そうなんです。自分の生活を守るためには、親のお金だけで介護できる期間を長くする必要があります。親の収入が増える期待はあまりできないので、いかに支出を減らして、自分の生活に影響が出ないようにするかがポイントです。場合によっては、親の介護費用を捻出するために、親が所有している不動産の売却などもふくめて考えることも必要になってきます。
【K】ずいぶん現実的な話ですが、そういう経験があるんですか?
【くどひろ】はい。父が倒れたとき、父はまったく現金を持っていませんでした。唯一の資産がマンションだったので、すぐに不動産屋に簡易査定をお願いして、いくらになるかを調べてもらいました。そこから、父の介護費用を何年賄えるかを計算したうえで、当面はわたしが立て替えると決めたんです。親のためにやるべきことはたくさんありますが、同時に自分の生活を守るための行動をする。結果として、それは親孝行になるし、自分のためにもなるわけです。
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