なぜスポーツでも日本一? 立命館が磨く「困難な仕事を乗り越える力」

立命館大学パンサーズ

2024年春の国家公務員総合職試験で早慶を抜き全国３位となった立命館大学。関西の枠を超えて日本全体で存在感を増す「すごさ」を、同大学客員教授の西山昭彦氏が多角的に分析する。

 

スポーツ界でも吹き荒れる旋風

学生の活動は、勉強と課外活動に分けられる。前者では、2024年春の国家公務員総合職試験で立命館大学は東大、京大に続く3位になり、私立大学1位を達成した（詳細は拙著『立命館がすごい』参照）。

後者の課外活動はというと、体育会各部が2024年後半から年始にかけて、立て続けに1位を達成した。

2024年10月27日、「第42回全日本大学女子駅伝対校選手権大会（杜の都駅伝）」が仙台市で開催され、女子陸上競技部が9年ぶり11度目の優勝を果たした。

12月15日、阪神甲子園球場にて全日本大学アメリカンフットボール選手権決勝「甲子園ボウル」で、アメリカンフットボール部PANTHERS（立命館大学パンサーズ）が日本一の栄冠に輝いた。

12月30日、2024全日本大学女子選抜駅伝競走（富士山女子駅伝）で、女子陸上競技部が大会新記録で7年ぶり6度目の優勝を果たした。このように2024年後半、大学スポーツ界で立命館大学の旋風が吹き荒れた。

 

文化価値と教育における意義

そして、中学生から社会人までがたすきをつなぐ都道府県対抗の全国女子駅伝が2025年１月12日、京都市で行われ、京都チームが3年ぶり19回目の優勝を果たした。京都チームのメンバーは、立命館宇治高校と卒業生が主力だった。

2区・高校キャプテンの佐藤ゆあ（優秀選手賞受賞）がレースの先頭に立ち、5区・芦田和佳と7区の大西桃花は区間賞の走りでチームの優勝に貢献した。また、宇治高校を卒業した立命館大学の学生（1区・中地こころ、4区・山本釉未〈20歳以下の日本代表〉、6区キャプテン・村松灯）が京都府代表として出場し、チーム一丸で優勝を獲得した。

立命館高校・大学の活躍はもはや偶然ではない。その背景には、立命館の独自のスポーツ政策とそれを具現化した全学が一丸となる体制の両輪があって、その上に日本一が達成された。

2014年4月、立命館は立命館憲章にもとづき「立命館スポーツ宣言」を発した。

その内容は、スポーツの文化価値とその教育における意義を認識し、スポーツに関する諸分野での教育・研究を高い水準で推進し、わが国のスポーツの振興・発展をリードする存在となるよう努める。

また、立命館は、スポーツが校友（卒業生）・父母を含む学園関係者が一体となることに貢献し、学園の発展を促す重要な原動力となると考え、この振興と発展に努める。さらにスポーツを通じて、老若男女を越えた地域コミュニティの形成と発展に携わり、地域社会の健康で豊かなコミュニティづくりに貢献することを社会的役割の一つとする、と宣言している。

 

単位を取らなければ試合に出られない

学園としてスポーツの位置づけが明確に定められ、立命館大学ではスポーツ強化オフィスが55の体育会の支援を組織的に行なっている。

よく「スポーツ選手は学業は二の次だろう」という外部の声があるが、立命館大学ではスポーツをやっていても、特別扱いはしない。2014年の「学生アスリートの誓い」で、スポーツを学生の成長の場と見なすとともに、学業とスポーツの両立に努めることを明確にしてきた。

「学業ガイドライン」（公式戦・大会出場のための修得単位数基準）の制定も行われている。この取り組みについては、大学スポーツ協会（ユニバス）から「成績管理・対策に関する優秀取組賞」の最優秀賞（2021年）を受賞している。

体育会学生も他の学生のように正課の授業にきちんと出席し、単位を取らなければならないし、もし単位を取れなければ試合に出られない、という厳しいルールを敷いている。

学業とともにスポーツで日本一をめざす姿は、他の学生によい刺激になるし、大学全体の学生の成長を促進する効果がある。選手はあらゆる場面で自己を高めていく。

こうして選手が将来、非スポーツ分野でも活躍できる基盤がつくられる。企業に入っても、「目標に向けて極限まで自己を律し、高めてきた人」はさまざまな困難な仕事に立ち向かい、乗り越える力を持っているのである。

【UNIVAS AWARDS 2020-21】成績管理・対策に関する優秀取組賞「最優秀賞」
https://univas.jp/find/univas-awards/article/20210416799520/