9.11やイラク戦を指揮したラムズフェルド国防長官の回想録

NEWSポストセブン / 2012年4月13日 16時0分

【特別書評】『真珠湾からバグダッドへ ラムズフェルド回想録』(ドナルド・ラムズフェルド著)
【評者】古森義久(産経新聞ワシントン駐在編集特別委員)

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 男女の権利の平等が徹底して求められる現代アメリカでも「男らしさ」という言葉は完全な死語にはなっていない。「強く、たくましく」とか「危険や衝突や闘争を恐れない」という意味での「男らしさ」という概念はよくも悪くも、まだちゃんと生きている。本書の著者ドナルド・ラムズフェルド氏はまさにその男らしいアメリカ人である。

 自己の信念や思想は断固として曲げない。反対されても「批判されることは働いていることだ」と豪語して、揺らがない。だから敵も多くなる。他方、味方からの支持は熱く、堅い。

 私はこの原書の刊行を記念するセミナーに出たことがある。昨年3月末、ワシントンのハドソン研究所だった。パネルにはダグラス・フェイス元国防次官、ピーター・ペース元米軍統合参謀本部議長、ルイス・リビー元副大統領首席補佐官といった著名人が並んだ。前ブッシュ政権で対テロ、対アフガニスタン、対イラクの各闘争をともに遂行したラムズフェルド氏のかつての同志や部下たちだった。

 定員二百人ほどの会場は超満員で単なる出版記念とは思えない活気と熱気に満ちていた。パネリストも一般参加者もラムズフェルド氏とその回想録に鋭いコメントを浴びせたが、基調は明らかに強い畏敬と連帯の念にみえた。この時点で78歳だった同氏がなお鮮烈に体現するアメリカの価値観への強固な賛同とも映った。リビー氏の言葉が印象に残った。

「ワイオミング州の山中の別荘にいたチェイニー副大統領に緊急に面会する必要が起きました。厳冬の未明、豪雪のなかを単身、二時間も歩き、シークレット・サービスに撃たれそうにまでなって、やっとたどり着いた。あまりの疲れについチェイニー氏に『苦労しました』とこぼすと、即座に『ラムズフェルド氏の下で働いたときの私の苦労には足元にも及ばないと思うよ』と一笑されました」

 国防長官や大統領首席補佐官としてのラムズフェルド氏の異様なほどの勤勉さや厳格さを示すエピソードだった。副大統領までがかつての部下だったという同氏の国政活動の歴史の重さを反映する逸話でもあった。

 八百頁を超える本書はそのラムズフェルド氏の自伝である。シカゴの普通の家庭に生まれた同氏が学生時代に必死に働き、学び、レスリングで五輪候補としてまで活躍し、海軍パイロットを経て下院議員から国政の階段を急上昇していく過程が人間的なタッチで生き生きと描かれる。だが主題はあくまで彼が2001年に国防長官に再任されてからの9.11テロにからむアフガニスタンやイラクでの闘争だといえよう。

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