船の事故は交通事故とは違い被害者が加害船の過失を証明する

NEWSポストセブン / 2012年5月20日 16時0分

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「不注意で他者の船にぶつけました。責任や対処の仕方を教えてください」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 海で小船に乗って釣りをしていたとき、船が他の小船にぶつかる事故がありました。相手の小船が傾いて、乗っていた相手の人は海に放り出されてしまいました。幸いにもすぐに引き揚げられて無事でしたが、このような場合の船をぶつけた私の責任や損害賠償責任は、どのように考えるべきでしょうか。

【回答】
 海の衝突事故については過失のある側が不法行為者として責任を負うのは当然のことで、交通事故などの一般的な不法行為と同じです。しかし自賠法により、人身事故では被害者が運転者の過失を証明しなくても、運転者や所有者などの運行供用者の方が無過失を証明できなければ、責任を負う交通事故と違い、海難事故では、被害者が加害船の過失を証明しなければなりません。

「小船」とは、手漕ぎのボートですか。それとも、動力を備えた船ですか。後者の場合は、過失判断の前提として、航法や船に備える設備などについて定めた海上交通安全法、港則法、海上衝突予防法という法律が適用されます。

 どこの海で航行しているかによって、法律が使い分けられますが、こうした法律に定められた航法に違反したり、設備に不備があると、過失が認められることになります。手漕ぎボートの衝突であれば、事故状況に応じた常識的な判断が重要な要素になるでしょう。

 次に責任を負う範囲ですが、原則は通常の交通事故などと同様に、被害者側に発生した船の損傷の修理代や、転落したことで失われた物の代価、さらには汚れた衣服の洗濯代などが、物損として損害になります。また、怪我の治療費や休業損害、治療期間中の慰謝料、さらに死亡したときや後遺症が残れば、逸失利益や慰謝料が損害になります。被害者にも落ち度があれば、過失相殺されます。

 但し、海難事故には船主責任制限法という特別な法律があり、一定の手続きをとることで、船主や船長の責任が制限されることがあります。大きな海難事故では莫大な損害になり、そのまま認めれば海運業が成り立たなくなることから制限する制度です。領海の外の海洋を航行する船の事故であれば、この法律が適用されます。

※週刊ポスト2012年5月25日号



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