中国の病院 患者遺族が遺体を持ち込み抗議の院内葬儀急増中

NEWSポストセブン / 2012年5月20日 16時0分

 日本では治療費を踏み倒す患者が増えて病院経営を圧迫する問題が指摘されるが、中国ではさらに過激な問題が起きている。十分な治療を受けられなかった患者の遺族などが、患者の死亡後に病院に押し掛け、院内で葬儀をしたり遺体を玄関に置いて抗議するという行動が目立っているのだ。その背景を、ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。
 
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 中国で、ちょっと変わった通達が全国の病院に向けて流された。発信元は国務院(内閣)の衛生部と公安部である。日本でいう厚生労働省と警察庁が合同で指導する内容だ。

 通達が発せられた目的は、病院の秩序維持。具体的には、〈違法な手段で葬儀の施設を院内に設けたり、遺体を放置するなどの行為を取り締まる〉というものだ。

 日本人が聞けば、「葬儀?」「遺体の放置?」と簡単には理解できないかもしれないが、これは実は病院内で起きる患者とのトラブルが激化して社会問題になっていることを受けて出された通達だったのである。

 日本では治療費を踏み倒す患者が増えて病院の経営を圧迫する問題が指摘されるが、中国の問題はまったく逆だ。治療費がないと分かれば門前払いを食らうことも珍しくなく、払えないと病院が判断すれば治療の内容を変えてしまうこともあるのだ。

 そのため、門前払いを食らった患者の遺族や十分な治療を受けられなかった患者の遺族などが、患者の死亡後に病院に押し掛け、院内で葬儀を行ったり遺体を玄関に置いたりして抗議するという行動が目立っているのだ。

 5月2日には、広東省で一組の夫婦とその親族が、病死した子供の遺体を病院に持ち込み入り口やエレベータホールに座り込むという事件が起きている。子供は細菌感染による軽い腎炎と診断され、入院を申し出た夫婦の願いを聞かずに退院させ、その結果、容態が急変するのに対応できずに死んでしまったのである。

 以前ならば病院側の通報があれば公安は有無を言わせず遺族たちを排除したものだが、現状は少し違う。日本並みに「民事不介入」の姿勢が目立つのである。

 このことに、もともと自分自身でもめ事を解決する中国人の性質が重なって、「手術を失敗した医師を刃物で切りつける」、「待たされ過ぎたことに腹を立てて事務員を殴る」、「医師を脅迫する」などのトラブルが絶えなくなったのである。

 門前払いも平気な病院側も問題だが、患者にも困ったものだ。

 今年、中国医師協会が行った全国114か所の病院を対象にした調査によれば、いま中国では年間平均22件の紛争が起きているという。なかでも専門性が必要な病院との訴訟では勝てる見込みが少ない患者が、実力行使に出るケースが多くなるのが避けられないらしい。



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