大家族描いた作家・小路幸也「ちゃぶ台はホームドラマの命」

NEWSポストセブン / 2012年5月24日 7時0分

「僕らの世代は『ありがとう』や『寺内貫太郎一家』など、1960~1970年代の良質なホームドラマを見て育ったので、何があっても“湿っぽいのは嫌えだ”って意地を張る人を、たぶん僕自身が好きなんですね。〈あの頃、たくさんの涙と笑いをお茶の間に届けてくれたテレビドラマへ〉と巻末に謝辞があるのは、そういうわけです」

 と語る小路幸也氏(51)の“東京バンドワゴンシリーズ”は、最新刊『レディ・マドンナ』で7作目。表題はいずれもビートルズの名曲に由来し、東京の下町で三代続く古書店・東亰バンドワゴンを営む大家族の堀田家が活躍するストーリーだ。

 頑固だが情に厚い〈勘一〉や、その息子で還暦を過ぎた伝説のロッカー〈我南人〉ら、四世代同居の大家族が古本と共に舞い込む事件を解決に導く物語は毎回笑いあり涙あり。冬・春・夏・秋の計四話のうちに子供たちは成長し、大人は歳をとるが、我南人の決めゼリフ〈LOVEだねぇ〉だけは、変わらないのである。小路氏は語る。

「元々は昭和のホームドラマっぽい設定で、M.リューイン『探偵家族』をやろうと。イギリス・バースで探偵業を営むイタリア系の大家族が、マンマの味を囲みながら毎回瑣末と言えば瑣末な事件を解決する、という小説です。日本でもちゃぶ台はホームドラマの命ですからね。毎朝全員で食卓を囲むシーンは僕自身、楽しんで書いています」

〈食事は家族揃って賑やかに行うべし〉〈本は収まるところに収まる〉等々、堀田家には代々の家訓があり、83歳の勘一から3歳の曾孫〈かんな〉と〈鈴花〉まで総勢12名が大きな一枚欅の食卓に集う。ある冬の朝の献立を紹介すれば、〈ご飯につみれの入った具沢山のおみおつけ、きれいな彩りなのはウインナーとカリフラワーのいり玉子でしょうか〉〈かんなちゃんと鈴花ちゃんの大好物であるちくわと胡瓜のマヨネーズ和えもあります〉。

 物語の語り手は6年前に先立った勘一の妻〈サチ〉。幽霊ならではの自在さで一家を見守る彼女は端正な言葉遣いが耳に心地よい。

「例えば沢村貞子さんとか、東京の下町の母親の優しく、それでいて媚びない日本語を、僕は旭川の社宅の白黒テレビで聞いて育ち、言葉の面でもテレビに育てられた元祖テレビっ子。画面の中のいろんな家族を、僕は僕で製紙工場に勤める父と専業主婦の母と2人の姉の一家団欒で見ていて、Hな場面では父親が急に咳払いを始める、とかね(笑い)」(小路氏)

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