森元首相の特使派遣は対露外交を政争の具にせぬことを意味

NEWSポストセブン / 2012年6月26日 7時0分

 プーチン新体制が始動し、ロシアが国際社会の注目を集めている。日本の悲願である北方領土返還のために、交渉はどう進められるべきなのだろうか。野田・プーチン首脳会談が予定されているメキシコG20に向け、既に水面下では準備が着々と進められているという。首脳会談を成功させるために、日本政府が取るべき方策はどのようなものか。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が提言する。

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 日露関係を改善の軌道に乗せるためには、6月18、19日にメキシコのロスカボスで行なわれる20か国・地域(G20)首脳会合のときの野田佳彦首相とプーチンの初会談が成功することが重要だ。

 両首脳が人間的に好感を抱き、平和条約交渉の加速化に合意すれば(平和条約には、領土もしくは国境線の画定に関する条項が含まれる。従って、平和条約が締結されるということは、日露間の領土問題が最終的に解決することを意味する)、初会談としては十分な成果だ。

 ところで、G20のような国際会議では日程が窮屈なので、日露首脳会談に割くことができる時間は、過去の例からすると30分程度だ。しかも逐語通訳を通すので、実質的な会談時間は15分である。外交の世界では、対等が原則なので、野田首相の持ち時間は7分半だ。

 この時間で、北方領土を含む日露間の外交問題に関する見解を野田首相が述べることは不可能だ。同時にこの会談を野田首相がプーチンに「大統領ご当選おめでとう。お会いできて光栄です」と述べるだけの儀礼的会談にしてはならない。そのためには、入念な根回しが必要になる。

 その点で4月29日から5月4日まで民主党の前原誠司政調会長がロシアを訪問した意義は大きい。5月2日に前原氏は、ラブロフ外相、ナルイシキン国家院(下院)議長、ワイノ政府官房長官(当時、5月22日付大統領令で大統領府副長官に就任)と会談した。この3人はいずれもプーチンと直接会うことができるインナー・サークルの構成員だ。前原氏の訪露に同行した朝日新聞の政治部記者はこう報じた。

“〈前原氏、ロシア外相と会談 領土問題「懸案解決を」

 民主党の前原誠司政調会長は2日、ロシアのラブロフ外相とモスクワ市内の日本料理店で会談した。前原氏は北方領土問題について「懸案を解決して平和条約を結び、両国関係の発展を進めなければいけない」と指摘。

 これに対しラブロフ氏は、北方四島での経済協力について「両国の法的立場を害さない前提で実を結ぶことを望む」と応じた。/前原氏は会談に先立ち、地元テレビ局の取材を受けた。領土問題について「4島は日本固有の領土という立場は揺るがない」としながらも、「互いの立場は56年間議論を尽くした。同じように繰り返すことが建設的とは思わない」と述べ、新たな解決策が必要との認識を示した。

 ただ、日本国内では2島先行返還論などへの批判が根強いため、この場では具体的な案に言及しなかった。(モスクワ=鈴木拓也)〉(5月2日、朝日新聞デジタル)”

 前原氏は、法的、歴史的議論を繰り返しても不毛なので、最高首脳の政治決断で北方領土を解決すべきだというメッセージをプーチン側近に伝えたのである。

 このアプローチはプーチンの琴線に触れる。さらに野田首相は、「プーチン大統領と個人的に親しい森喜朗元首相に首相親書を携行させ特使としてモスクワに派遣すべきだ」という鈴木宗男新党大地代表の進言を採用し、現在、官邸主導で森・プーチン会談の準備が進められている。

 親書で野田首相の考えがプーチンに直接伝えられるとともに、野党自民党の重鎮である森氏を特使として派遣することで、対露外交が政争の具となることはないというメッセージもロシアに伝わる。

※SAPIO2012年6月27日号



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