「動脈硬化など血管系疾患リスクに『EPA』有効」と専門医

NEWSポストセブン / 2012年7月31日 16時0分

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「2020年にかけて、心血管系疾患が爆発的に増える可能性がある」と平井博士

 昨今、食品やサプリメントとしてよく目にするのが、魚油に含まれる健康成分「EPA(エイコサペンタエン酸)」。EPAの効能についての発表も相次いでおり、大手水産・食品会社のニッスイが、7月23日都内で「血液・血管の健康を保つ機能性油脂『EPA』について」というセミナーを行なった。

 今年4月には、消費者庁の食品の機能性評価モデル事業の結果発表で、EPAを含むn-3系脂肪酸は、「機能性について、明確で十分な根拠がある」として、対象11成分のなかで唯一、最高の“A評価”を受けた。これは、アメリカやEUでの評価とも一致している。

 今年6月には、国立がん研究センターが「n-3系脂肪酸の摂取量が多いグループは、肝がんリスクが低い」と発表。さらに、昨年8月には、日本循環器学会では「血中のEPA/AA(アラキドン酸)比が低い人は、心血管死亡率が高い」と発表された。

 EPAは、イワシやサバなどの青魚に多く含まれるn-3系高度不飽和脂肪酸の1種で、「血液をサラサラに保つ」、「中性脂肪を下げる」などの働きが知られている。今回、消費者庁がA評価したEPAの機能は、以下の3つ。

【1】心血管疾患のリスク低減
【2】血中の中性脂肪低下作用
【3】関節リウマチ症状の緩和

 現在、サプリメントなどの栄養機能食品については、効果・効能の表示は認められていないが、今回、EPAを含むn-3系脂肪酸の健康機能について十分な根拠があると認められたと考えられる。

■血中のEPAが少ない人は死亡率が約3倍高い

 最近、死亡リスク、とくに動脈硬化や心筋梗塞などの“心血管系疾患”による死亡リスクを予測する指標として注目されているのが、「EPA/AA比」。これは、血液中に含まれるEPAとAA(アラキドン酸)の比率のこと。AAは牛・豚の脂に多く含まれていて、血小板凝集作用や、炎症を起こしてしまうという働きがある。

 1961年から続く福岡県久山町での疫学調査では、EPA/AA比が欧米人並みに0.25未満と低い(つまり血中のEPAが少ない)人は、0.75以上の人に比べて、心血管系疾患の発症率や死亡率が約3倍も高いことがわかった(2011年 日本循環器学会での発表)。

 EPA/AA比は、魚をほとんど食べない欧米人は約0.1、日本人は平均0.5~0.6とされているが、実は年代によってかなりの差がある。日本人でも、65歳以上は0.68と高いが、45~64歳では0.51、45歳未満では0.28と、若い世代は欧米並みの値に近いのだ。

 千葉県立東金病院院長・平井愛山博士は1980年から82年に、千葉県でEPAに関する疫学調査を行なった。その結果、漁村では農村に比べて魚を約3倍多く食べており、EPA摂取量に換算すると、漁村では1日2.7g、農村では0.9gと、漁村のほうが2倍以上も多いことがわかった。さらに、両地域での虚血性心疾患と脳血管系疾患の発症率を比較したところ、漁村のほうが明らかに低かった。

 このデータから、EPAの医薬品化への取り組みが始まり、漁村と農村のEPA摂取量の差から、現在では医薬品としてのEPA投与量は1.8gとされている。

■増加するメタボや糖尿病対策にもEPAが光明に

 2000年に行なわれた調査では、10年前と比較して、30~50歳代の中性脂肪値上昇とともに、糖尿病患者数に著しい増加が見られた。メタボリックシンドロームの患者も増加していることから、平井博士は、「2010年から20年にかけて、心血管系疾患が爆発的に増える可能性がある」と、警鐘を鳴らす。

 また20年前に比べ、患者数が約3倍にもふくれあがっている糖尿病も、脳梗塞や心筋梗塞の大きなリスク要因となる。糖尿病になると、動脈硬化が進み、これらの発症率が3倍にもなるからだ。

 動脈硬化の要因となるコレステロールについては、現在、その値を約3割低減できる医薬品が医療現場では使用されている。しかし、平井博士は、「医薬品のみでは、心血管系疾患への対処には限界がある」と話す。そこで注目されているのが、コレステロール低下薬とEPAの併用による血管系疾患の治療だ。

「EPAには、血中の中性脂肪を減らすだけでなく、血が固まるのを防ぎ、血管そのものを柔らかく保って、血管の病気を抑える作用があります。これを利用するのです」(平井博士)

 研究では、脂質異常症の患者を約9300人ずつの2グループに分け、一方には血中コレステロール値を下げて、動脈硬化を予防する医薬品のみ、もう一方には同じ医薬品と1日1.8gのEPAを投与。その結果、EPAを併用したグループでは、コレステロールだけでなく、中性脂肪も明らかに減少し、(心臓の)冠動脈へのトラブル発症率が5年間で約3割も低くなった。

「中性脂肪が多く、善玉コレステロースの少ない人の場合、EPAを併用することで、冠動脈疾患の発症率が53%も低減しました。EPAを利用することで、医薬品の限界を打ち破ることができるのです」(平井博士)

 メタボリックシンドロームや、その予備群にも、EPAは有効だ。平井博士によると、中性脂肪の増加を防ぐには、「1日2g以上のEPAをとることが有効」という。例えばイワシなら、可食部100g中のEPAは多くて1.4g、マグロのトロなら1.3g、白身魚のカレイなら0.2gのEPAが含まれている。この量を毎日継続して摂取するのが難しければ、EPA配合のサプリメントやドリンクなどを活用するのも、ひとつの手だろう。

 生活習慣病は、痛みなどの前兆もなく発症することが多い。メタボやメタボ予備群だけでなく、現在は健康という人も、ひとたび生活習慣病を発症してしまえば、生涯続く病気のリスクや不安、節制した生活からは逃れられなくなる。そうなってからでは遅いのだ。「毎日、魚とEPA」で、心血管系疾患の不安だけでも解消しておくのが、この先をラクに生きる術のひとつかもしれない。



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