在老廃止 年金繰り下げ受給のデメリットが小さくなる

NEWSポストセブン / 2019年6月20日 16時0分

在職老齢年金の廃止は60歳以降の働き方の常識を変える

 政府は、6月11日発表の「経済財政の基本方針(骨太の方針)」で、働く高齢者の年金を減額する「在職老齢年金制度」(在老)の“廃止”を打ち出した。現在、60~64歳までは月給と年金の合計収入が28万円、65歳以上は47万円を超えると働き続ける限り年金がカット(支給停止)される。早ければ2021年に廃止となる。

 在職老齢年金によるカットが廃止されることで、「得する年金術」の常識も大きく変わることを知っておきたい。

 年金を70歳まで繰り下げて受給すると、毎月の年金額は42%増える。だが、現行制度では当座の資金に余裕がある人が繰り下げを選んでも、「思いのほか年金が増えない」という事態に陥ることがある。

 なぜ、「思いのほか増えない」と思うのかといえば、これは在職老齢年金が原因だ。65歳以上の人が働きながら年金を受け取る場合、カットとなる基準は、「毎月の給料と年金の合計が47万円以上」に変わる。社会保険労務士の北山茂治氏が解説する。

「この基準を超えるのは、企業の役員クラスなどに限られますが、“どうせカットされるなら繰り下げて年金を増やそう”と考えても、思い通りにはいきません。『カットされたはずの年金は繰り下げても増えない』という仕組みがあるからです」

 65歳で月給50万円、年金の報酬比例部分が月額10万円の場合。65歳から年金を受け取ろうとすると、6万5000円がカットされる(ケース【6】)。

 

「これを繰り下げても、増額されるのは“カットされなかった年金3万5000円分”だけ。本来、月額10万円の年金を5年繰り下げれば14万2000円になるところ、11万4700円にしかならない」(北山氏)

 5年も受給を我慢して約15%しか増えないのだ。これが在老の廃止で、働きながら繰り下げても42%増の恩恵をまるまる受けられるようになる(ケース【7】)。

 このように、在職老齢年金の廃止は60歳以降の働き方の常識を変え、「老後資産」の形成に大きなインパクトを与える。だが、それに備えるには第2の人生のライフプランそのものの見直しと十分な準備期間が必要だ。

 たとえば、定年後の雇用延長期間に時短勤務で働いている人が、在老廃止直前になって慌てて「年金を減らされないなら、これからはフルタイムで働かせてくれ」と会社に申し入れても、すぐ働き方の変更を認めてもらえるとは限らない。

 ましてや、年金カット廃止を機に、給料と年金のダブル受給で老後資産を大きく増やそうと思うのであれば、現役時代に近い給料水準を維持しなければならない。そのためには、50代後半から定年後の雇用延長や再就職に備えてスキルを高めておくことも重要だ。

 在老が廃止されるのはまだ2~3年先だと考えられるが、その準備は今から始めないと間に合わない。

※週刊ポスト2019年6月28日号

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