在老廃止 「厚生年金に加入しない働き方」はいくら得なのか

NEWSポストセブン / 2019年6月23日 7時0分

老後の人生設計も慎重に

 政府は、6月11日発表の「経済財政の基本方針(骨太の方針)」で、働く高齢者の年金を減額する「在職老齢年金制度」(在老)の“廃止”を打ち出した。現在、60~64歳までは月給と年金の合計収入が28万円、65歳以上は47万円を超えると働き続ける限り年金がカット(支給停止)される。早ければ2021年に廃止となるとの見方が有力だ。

 在職老齢年金によるカットが廃止されることで、「得する年金術」の常識も大きく変わることを知っておきたい。たとえば、本誌・週刊ポストがこれまで「働きながら年金を満額受給する方法」として紹介してきた「厚生年金に加入しない働き方」だ。社会保険労務士の北山茂治氏が解説する。

「働く60代以上の年金をカットする在職老齢年金の仕組みは、あくまで『厚生年金の加入者』が対象の制度です。つまり年金カットを避けるには、厚生年金に加入しなければいい。定年後に働き続ける場合、会社に再雇用されるのではなく、個人事業主として『業務請負契約』を結ぶ働き方が実現できれば、いくら稼いでも年金がカットされることはありません」

 図解は、63歳から月額10万円の特別支給の老齢年金を受け取れる人が、同じ「月25万円」を稼いだ場合に、その働き方によって65歳までの総収入がどう変わるかを示したものだ。

 現行の在職老齢年金制度で「会社員」として働くと、月3万5000円の年金がカットされる上に、給料から毎月2万3790円の厚生年金保険料を天引きされてしまう(ケース【1】)。

「一方、会社と月額25万円の業務請負契約を結んだ場合、年金は一切カットされず、保険料の天引きもない。65歳までの2年間だけで総収入は約140万円も多くなる(ケース【3】)」(北山氏)

 では、将来的に在職老齢年金が廃止された場合に、どうなるのか。年金カットの制度がなくなれば、会社員として働き続けても、年金は満額の月10万円を受け取れるようになる(ケース【2】)。

 こうなると「厚生年金に加入しない働き方」と比べて、どちらが得なのか。

「両者の差は拮抗してきますが、健康寿命、平均寿命を勘案すれば、それでも『厚生年金に加入しない働き方』が得といえるでしょう。業務請負契約などで稼げば、年金保険料の支払いがゼロになる一方、会社に雇用されると、2年間で保険料約57万円を支払うことになる。保険料を多く払ったぶん、65歳以降の年金は増えますが、年額で約3万2000円増にとどまります。63~65歳で生じた57万円の差を取り戻すには約18年かかり、83歳まで損得は逆転しない」(北山氏)

 在老が廃止された場合でも、本誌が指摘してきた「厚生年金に加入しない働き方」の有利さは変わらない。

 とはいえ、雇用延長で会社員として働く場合は65歳までの雇用が義務化されているが、自営業となって会社と業務請負契約などを結ぶ場合、契約更新できなければ65歳になる前に仕事を失うリスクもある。

「生活の安定を考えたら60歳以降も会社員として働きたい」と考えている人は多いはずだ。

 安定重視で会社員(厚生年金加入)を選ぶと、これまでは容赦ない「年金減額」が待ち受けていたが、在老が廃止されれば会社員として雇用延長しても十分なメリットがある。働き方の選択の幅が増えるのだ。

※週刊ポスト2019年6月28日号

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