醤油離れでも経営堅調キッコーマンは利益の7割を海外で稼ぐ

NEWSポストセブン / 2012年9月2日 16時0分

 日の丸家電の危機的状況が続いている。こうした惨状に対して、「日本のエレキ業界はキッコーマンに学べ」と説くのがグローバル経営に詳しい西安交通大学客員教授の林廣茂氏。以下、林氏の指摘である。

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 キッコーマンは、主力商品である醤油の国内市場が縮小するなか、海外で成功を収めることで業績を維持してきました。
 
 国内の醤油離れは激しく、1981年には約10リットルだった1人当たり醤油消費量は、2011年、6.5リットルにまで落ち込みました(しょうゆ情報センター調べ)。センターによると、背景には洋食が広まったこと、簡単に調味できるだし醤油やつゆ・たれの消費が増えたことなど、食生活の変化があります。

 一方で、キッコーマンの売上は、この35年間で1.5倍に増えています。主な要因は、海外市場で売上を伸ばしてきたから。現在、キッコーマンは売上の約5割、営業利益の約7割を海外で稼ぎ出しています。

 では、なぜキッコーマンは海外で成功できたのか。これは、なぜエレキの巨人であるシャープやパナソニックが失敗したか、のヒントにもなります。キーワードは、現地への適応化です。

 現地への適応化には大きく2パターンあります。1つは、日本で開発した商品・製品を、現地の目線で適応化する方法。2つ目は、現地のニーズやウォンツに合わせて、最初から現地で商品開発をする方法。もちろん、どちらも基本的な、あるいは核となる技術は日本から持ち込みますが、アプローチの仕方や適応化の度合いが異なります。

 キッコーマンは、主として2つ目の戦略で成功しました。一方、家電メーカーは、1つ目の戦略をとって主に新興国市場で失敗し、いま苦境に陥っています。

 キッコーマンは、各国・各地の家庭料理に受け入れられるよう、醤油の味を変えているのです。食という極めて文化的な、現地の食生活に食い込まなければ根付かない商品という認識が、海外進出をはじめた1960年代当時からあった。海外の醤油は、日本人がイメージするあのしょっぱい醤油とはちょっと違うんですね。たとえばアメリカで人気なのは、醤油をベースにしているが甘いテリヤキソース。それから、価格設定も重要です。それぞれの国の食費の範囲内で買えるレベルにおさえてきました。

 一方、家電メーカーは、1つ目の戦略で挑んだものの、高い日本目線が、急増している中間所得層に受け入れられず、中国を除くアジア全域、それから欧米などでも、韓国のサムソン・LGに敗退しました。円高が続き、価格競争力の点でも日本勢は不利だった。一刻も早く2つ目の戦略に転換すべきでしたが、遅きに失しました。

 自動車業界は、新興市場で、最初は1つ目の戦略で挑んだもののうまくいかず、最近2つ目の戦略に転換しました。なかでも日産は、特に中国で、いち早く2つ目の戦略に転換して日本勢でトップに立ちました。遅れたトヨタ・ホンダも今年になって、ようやく業績が回復しつつあるようです。それでも日本勢は、ロシア・中国・インドなどで、韓国の現代自動車にシェアで引き離されています。

 日本人のものづくりの意識の高さは、現地のニーズに合わせるフレキシビリティに欠ける傾向を生むこともあるので、経営者には適切な舵取りが求められます。




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