なぜ旅客機パイロットは乗務前に大量の酒を飲んでしまうのか

NEWSポストセブン / 2019年8月10日 7時0分

花形職業であるはずのパイロットに異変が…(時事通信フォト)

〈瓶ビール10本以上、白ワイン2杯、赤ワイン1本〉〈ワイン2本、瓶ビール3本、缶ビール2本〉〈ビール中ジョッキ10杯〉──実はこれらは、搭乗前の飲酒が発覚した航空会社のパイロットが「白状」したアルコールの摂取量である。夏休みの空の旅を楽しみにしている人は、こうした「酒量」をどう思うだろうか。

 国土交通省によると、乗務前に実施するアルコール検査などで乗務に影響のある飲酒が発覚したのは、2013年以降で41件(昨年12日5日時点)。うち23件で欠航や遅延が発生した。

 今年に入ってからも、パイロットの飲酒問題は後を絶たない。6月8日には、日本航空系列の日本トランスオーシャン航空で、男性機長が飲酒検査でアルコールが検出されたため乗務できず、2便が欠航した。同月20日には、日本航空の国内線の男性副操縦士が乗務前夜にビールを中ジョッキ10杯ほど飲んで乗務を取りやめた。

 全日空も負けてはいない。3月15日には、全日空子会社エアージャパンの国際線の副操縦士からアルコールが検出された。この副操縦士は「13日夜に自宅やバーで330mlの瓶ビールを10本以上と白ワイン2杯、14日午前に赤ワイン1本を飲んだ」と話した。同社は別のパイロットの飲酒問題で、1週間前に国土交通省から厳重注意を受けたばかりだった。アイベックスエアラインズやAIRDOといった中小の航空会社でも、パイロットがアルコール検査を受けずに搭乗するなどの不祥事が多発している。

 多くの人命を預かるフライトの前に深酒はいけないことは子供でもわかりそうだが、なぜ花形職業であるパイロットの飲酒問題は繰り返されるのか。

◆飲酒で疲労やストレスをまぎらわす

 元日本航空機長で、B747型ジャンボジェット飛行時間の世界記録を持つ航空評論家の杉江弘氏は、「パイロットの過酷な勤務体系」が背景にあると指摘する。

「現在は慢性的なパイロット不足のなかで空港の24時間化や路線増加が進み、パイロットの仕事がますます激務になっています。例えば国際線の欧州便や米国西海岸便は、以前は現地到着から2泊しましたが、現在は1泊のみ。半日に及ぶフライトで米国西海岸に朝10時に着陸したら、翌朝10時には日本に帰る便に搭乗しなければならない。この場合、米国に到着後3~4時間仮眠するとその夜は眠れなくなり、時差にも悩まされます。

 また国内線の場合、飛行機が着陸してから次のフライトまでの時間は最短で25分。この間に副操縦士は次のフライトデータを打ち込んで機器の点検を行い、機長は外部点検を行い、時にはCAが担当する清掃やベルト直しを手伝います。そのうえで1日5回の離着陸というケースもあります」

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