千葉大停電 復旧遅れる行政、企業の超えられない「想定の壁」

NEWSポストセブン / 2019年9月19日 7時0分

台風15号の影響で傾いた電柱(写真/共同通信社)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々を心理的に分析する。今回は、長引く千葉県の大停電を分析。

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 台風15号の直撃で甚大な被害を受けた千葉県では大規模な停電が、依然として厳しい生活を強いられている地域がある。9月9日の上陸からすでに1週間以上が経過しているというのに、千葉県内のあちこちで未だに停電や断水が続いているのだ。

 被害状況の把握は大幅に遅れた。県が各自治体に職員を派遣したのは3日後の12日。16日になって、ようやく家屋被害が2787戸以上と発表したが、18日には6300戸を越え、今後も増えることは確実だ。経済産業省も、停電被害対策本部を設置したのは13日。東京電力は当初復旧見込みの時期を11日中と発表したが、その後度々修正し、多くの地域で最大27日までずれ込むという。行政も企業も対応が遅れた。ひどい話だ。

 災害によって甚大な被害が出る度に聞かれるのが“想定外”という言葉だ。森田健作千葉県知事は定例記者会見で、被害への対応の遅れについて指摘されると「想定以上の台風でこうすればよかったのではと言われると、確かに足りなかった部分があったかもしれず、大きな反省材料としていかなければならない」と述べた。

 東京電力も記者会見で、担当者が何度も復旧見込みを先伸ばしにしたことについて「台風の規模が今まで以上に大きかったことを考慮せず、過小な想定をした」などと説明。これに対し多くのメディアは見通しの甘さを指摘し、「想定外では済まない」「想定を見直す必要性がある」と批判した。

 だが、想定外を想像するのは実は難しい。人間は、経験してきたこと、見聞きしたことを基準に物事を推察する傾向があるからだ。そのため、一旦想定が出来上がってしまうと、その範囲でしかリスクを捉え、考えることができなくなる。想定の範囲内でしか事態を認識できず、想定の限界ともいえる「想定の壁」が存在するのだ。

 東京電力の担当者が「経験したことのない規模で倒木や設備損壊が発生した」と会見で釈明したように、経験していない事態が起ころうとしているのに、彼らはそれを想定していなかった。想定の壁を超えることができなかったのだ。「想定以上の台風」「全部想定通りにはいかない。自然とは予測がつかないんです」と述べた森田県知事もこの壁を越えられなかった一人だ。

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