【法律相談】遺産で対立 弁護士抜きで話し合うのは有効か

NEWSポストセブン / 2019年9月30日 16時0分

相続争いはモメるものだが…

 相続をめぐり親族関係がメチャクチャになるのは見るに堪えないもの。それを回避する方ために有効なのが弁護士を立てることだが、親族間の話に弁護士を入れることに抵抗がある人も少なくないだろう。父と叔父が遺産をめぐり対立したが、弁護士抜きで話し合ってほしい場合、どうすれば良いのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 大学生です。先日、祖父が亡くなり、相続をめぐって父と叔父が対立し、ついに互いに弁護士を立てる事態に。でも、話し合えばわかり合えると親戚一同、みなそう思っているのですが、弁護士の存在が直接対話を実現させません。こうなると、双方が弁護士を立てた時点で、後戻りはできないのでしょうか。

【回答】
 兄弟間の紛争を心配した親戚が、直接の話し合いの場を設けて和解に乗り出すことは、ごく普通にあることです。なお、一方側の弁護士だけが立ち合うことはできません。案件を受任した弁護士が、相手方も弁護士に依頼していることを知っている場合、その承諾を得ずに相手方本人と直接交渉することは、特別に正当化する理由がない限り、日弁連が定める弁護士職務基本規程に違反します。

 これに対して、親戚が仲介の労をとることについての制約はありません。まだ裁判所に調停や裁判が提起されていない段階のようですが、仮に手続きが始まっていても、その点は変わりありません。

 ただ、直接交渉が破綻したからこそ、冷静かつ客観的に対応できる弁護士を委任したと考えられるので、詳細を知らない外部の人が、弁護士抜きの直接面談を勧めるのは慎重に考えるべきです。それでも兄弟の紛争が直接協議で解決すれば結構なことですが、弁護士報酬の問題が残ります。

 民法の規定では「委任が受任者の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したときは、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる」とされています。依頼したばかりで、あまり実際にした仕事が少なければ、たいした額にはなりません。

 しかし、注意すべきは委任契約の条項です。そこには委任を一方的に終了させた場合に対応する定めがあると思いますので、それに従った応対が求められます。

 また、こうした定めがなくとも、話がまとまった段階で解任する場合には、弁護士報酬を値切るための解任と疑われ、代理人の業務による事件解決という報酬請求の条件の成就を妨害したものとされ、報酬全額をみなし報酬として請求される可能性もあります。

【プロフィール】竹下正己●1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2019年10月11日号

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