ガムを噛むと脳が活性化 高齢者の認知機能回復にも効果あり

NEWSポストセブン / 2012年10月5日 7時0分

 昔から「食事はよく噛んで食べたほうがいい」といわれてきたが、最近になって「噛む」ことの重要性が改めてクローズアップされている。とくに注目されるのが脳への影響だ。半年ほど前まで、脳梗塞の後遺症で認知機能が衰えて言葉を発することができず、ほぼ寝たきり状態だった斉藤ナツエさん(78才)は、ガムを噛んでみたところ、最近は喋ることができるようになったという。

 こうしたガムを利用した「噛む治療」を行った河原英雄歯科医院(大分県佐伯市)の河原英雄院長が言う。

「食べ物を噛むことのメリットは、消化しやすくすることだけではありません。実は近年、脳にたくさんの刺激を与えることが明らかになってきたんです」

「口」と「脳」。一見、関係ないように思えるが、噛むことで「口」と「脳」の間にさまざまな情報のやりとりがされるのだという。

「まず、食べ物を口の中に入れますね。すると、唇や舌は、それが何かを認識しようと働き始めます。次に、食べ物を噛むために、あご関節や唾液を分泌する唾液腺などたくさんの器官が働きます。そして、どんな味か、硬さはどのくらいかも判断していきます。脳にはこうしてさまざまな情報が送られ、刺激を受けて脳が活性化していくのです」(河原院長)

 こうした考えをもとに、河原院長が数年前に発案したのが、高齢者の「ガムトレーニング」だった。「噛む」ことは本来、日常の食事でゆっくりと行うことが理想だ。しかし、現代の食生活は、よく噛まなくても食べられる軟らかいメニューが増え、咀嚼回数は戦前の半分以下にまで減った。河原院長が見てきた患者のなかには、噛む力の衰えが原因で生活意欲を失ったと考えられるケースも少なくなかった。そこでガムの出番となる。

「ちょうど3年ほど前に、市販のガムより2倍硬い歯科用ガムが開発されたんです。このガムは噛んでも軟らかくならず、入れ歯にくっつきにくいという特徴がありました」(河原院長)

 これはライオンが全国の歯科医院で販売している『デイアップオーラルガム〈かむトレーニング〉』という硬性ガム。実は、子供が正しく噛むトレーニングをするための商品だったのだが、河原院長はお年寄りのガムトレーニングにも応用できると考えたのだ。

“ガムを噛むと脳が活性化する”──このことを示す実験データがあったことも、河原院長の背中を後押しした。

 明治大学理工学部の小野弓絵准教授らのグループは、20~70代の男女に協力してもらい、約30秒間、市販のガムを噛んでいる時の脳内の働きを調べる実験を行った。この結果について、小野准教授が解説する。

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