本屋大賞受賞の冲方丁氏 福島在住で「震災時書くことで楽に」

NEWSポストセブン / 2012年10月9日 7時0分

 書店員の投票で選ぶ本屋大賞を獲得し、ベストセラーになった『天地明察』(角川書店)。その著者が、冲方丁(うぶかたとう・35才)さんだ。『天地明察』は映画化され、現在大ヒット上映中。原作者である冲方さんは3回も撮影現場に足を運んだという。

「滝田(洋二郎)監督と加藤(正人)さんが書かれた脚本を読んで、どう演出されるのかに興味がありましたが、それを見事にやってのけてくれて素晴らしい作品になりました。それを導いたのが、主演の岡田(准一)くんの脚本の読み込み力とそれを演技として発揮する力。頭がよくて、体を張れる役者さんです。ぼくとしては大満足です!というだけでは悔しいので、映画の影響を受けて今後も頑張ろうと思いました」(冲方さん・以下同)

 独特の歴史観が話題を呼んでいる冲方さんだが、今回取り上げる本書は、歴史小説ではなく『小説すばる』に連載されたコラムをまとめたもの。ひとつのコラムは、原稿用紙たった5枚半。その中に、体験と涙を凝縮。書名の通り、思わずほろっときてしまうエピソードが満載なのだ。

「最初は、世の中に怒りの種は尽きないので、怒りをテーマにしたコラムにしようと考えていたんです。でもぼくが書くことによって、世の中の害になり、さらに世界が重くなってしまうのではないかと考えてやめました。それよりも怒りを解きほぐし、自分の感情や社会との和解に向かわせるものを書くほうがいい。人はどうやって和解に向かうのか――。それを考え始めてふと浮かんだのが、“もらい泣き”というタイトルなんです」

 さまざまな人にインタビューし、その話を基に創作していく。まさに、他人が泣く体験を読んで、思わず自分も泣いてしまうような創作を目指した。

「もらい泣きは、他人と自分の感情との和解による涙ではないかと。なので、作中の人物に共感してもらえるような話にしたいと思いました。それに、泣ける話なら、誰もがひとつやふたつは持っているので、ネタには尽きないだろうと思って…(笑い)」

 ところが意外にネタ捜索は難航した。なぜならその人の中には、この話が泣ける話だという認識がそれほどないからだった。冲方さんが「なんか泣ける話ない?」と尋ねても、多くの反応は薄かった。

「いろんな人に聞きまくりましたよ。でも5話目くらいでネタが尽きてしまって、この連載は長くは続かないだろうと思っていました(笑い)。でもそのうちにコツがわかってきたんです」

  • 前のページ
    • 1
    • 2
  • 次のページ
NEWSポストセブン

トピックスRSS

ランキング