吉野氏、山中氏ほか ノーベル賞受賞者が影響を受けた本

NEWSポストセブン / 2019年11月11日 16時0分

ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さん(時事通信フォト)

 リチウムイオン電池の開発で2019年のノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏(旭化成名誉フェロー)。受賞決定後の会見で、吉野氏が「科学への興味を持つきっかけになった本」として挙げたのが『ロウソクの科学』(ファラデー著)だった。

 会見直後から「子や孫に読ませたい」と出版社や書店に問い合わせが殺到し、版元各社は緊急重版を決定した。

 同書は19世紀イギリスの化学・物理学者、マイケル・ファラデーが子供向けに行なったロウソクの燃焼実験をまとめたもの。吉野氏はこの本を読み、「子供心に化学は面白そうだと思った」という。2016年にノーベル医学・生理学賞を受賞した大隅良典氏(東京工業大学栄誉教授)も、受賞時に「科学者を志すきっかけになった本」と紹介した。

「世界的な名著で、科学者の多くが子供の時に読んでいます。日本では複数の出版社から『ロウソクの科学』が刊行されており、最新版は写真入りで読みやすく、子供でも科学に興味が持ちやすい内容です」(サイエンス作家の竹内薫氏)

 2008年に物理学賞を受賞した益川敏英博士が「子供の頃に読んでいた」と紹介したのは月刊誌『子供の科学』だ。

 大正13年の創刊以来、90年以上にわたり科学好きの少年少女に愛されてきた同誌の愛読者には、白川英樹氏(2000年・化学賞)、小柴昌俊氏(2002年・物理学賞)といった歴代のノーベル賞受賞者がいる。前出・竹内氏は同誌をこう評する。

「通称は『子科』。実験に危険が伴う場合もきちんと説明し、論理的に分析する姿勢を養えます」

 iPS細胞の開発で2012年のノーベル医学・生理学賞を受賞した山中伸弥氏(京都大学教授)は、講演などで、幼少期に読んで影響を受けた本としてドイツのSF小説『宇宙英雄ローダン・シリーズ』を挙げている。書評家の大森望氏が同書について解説する。

「1961年から現在まで続く世界最長の宇宙冒険SFで、複数の作家チームで執筆され、邦訳も600巻以上刊行されています。宇宙のスケールや異星文明との遭遇が中高生にもわかりやすく描かれています」

 また山中氏は、2019年7月に刊行された『まなの本棚』(芦田愛菜著)に収録された対談で「中学生の頃に影響を受けた本」として『地球の科学 大陸は移動する』(竹内均、上田誠也著)を紹介している。

「現代科学に基づいて地球規模の雄大な話を読みやすく説いています。『もしかして』という発想力や空想の大切さを気付かせてくれる一冊です」(竹内氏)

 ノーベル文学賞作家の大江健三郎氏は、著書『読む人間』で9歳の頃に母親からもらったマーク・トウェイン(19世紀のアメリカ人作家)の『ハックルベリー・フィンの冒けん』の影響を強く受けたと書いている。

 大江氏を特に引き付けたのは、主人公のハックが一緒に旅をする黒人奴隷のジムを裏切ろうとして思いとどまり「よし、僕は地獄へ行こう」と決心する場面だ。

〈地獄に行ってもいいから、ジムを裏切るまい、と考える。私が影響を受けたのはその一行です〉(大江健三郎『読む人間』より)

※週刊ポスト2019年11月22日号

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