松井秀喜氏ら勝負師はなぜ宮本武蔵の生き様に惹かれるのか

NEWSポストセブン / 2019年11月16日 11時0分

サッカー界のレジェンドの人生を変えた本は?(時事通信フォト)

 各界の成功者たちは、ある共通体験をしている。子供の頃に読んだ本が、その後の人生に大きな影響を与えたというのだ。スポーツ界のレジェンドの原点にも、本との出会いがあった。

 日本サッカー協会顧問でメキシコ五輪の得点王の釜本邦茂氏はこう語る。

「子供の頃に読む本は時代小説が多かった。中でも記憶にあるのは、野村愛正の『三国志物語』です。これを読んだことで、子供心に“勝負は勝たないといけない”と強く感じた覚えがあります」

 日本サッカー史に残る“点取り屋”になれたのも三国志の影響があるという。

「無意識のうちに諸葛孔明の戦略と戦術が参考になったかもしれません。サッカーでも情報と分析は重要です。三つ子の魂百までではないが、性格だけでなく知識も頭のどこかに残っている気がします」(同前)

 2017年、前人未到の永世七冠を達成し、棋士として初の国民栄誉賞を受賞した将棋の羽生善治氏が10代の頃に夢中で読んだ本は、ノンフィクション作家・沢木耕太郎の『深夜特急』だ。

 15歳、中学3年生でプロ棋士となって以降、対局のための「移動」が日常になった。そんな羽生少年の傍らにいつもあったのが、著者がユーラシア大陸をザック一つで横断してイギリスまで旅するノンフィクションの名作だった。

〈『深夜特急』は沢木さんならではの表現力によって、見知らぬ国そのものの面白さ、そこに暮らす人々の息吹まで味わえます。それにも増してひかれたのは、1年の3分の1を旅先で過ごす、棋士人生の原点に似たものを感じたからかもしれません〉(朝日新聞2010年4月25日付)

 羽生氏のプロ棋士としての旅は、35年以上過ぎた現在も継続中だ。

 2013年に当時世界最高齢でのエベレスト登頂を達成し、87歳の今も現役プロスキーヤーの三浦雄一郎氏。少年時代に出会った吉川英治の『宮本武蔵』で描かれる武蔵の生き様が、自身の「原点」になったという。三浦氏が語る。

「中学受験に失敗して、浪人生活を送っているときに本を読み始め、そこで影響を受けたのが吉川英治さんの『宮本武蔵』です。同作では武蔵の生い立ちから青春時代、厳しい修行、命を懸けた果し合い、晩年の『五輪書』に取り組んだ姿が克明に描かれていました。

 命を懸けて剣の道を究めようという姿は、『スキーで世界の頂点に挑戦しよう』という気持ちのバックボーンになっています。その精神が、エベレストからの滑降や登頂へと僕を駆り立てるのかもしれません」

 メジャーリーグで活躍し、数々の大記録を残した元プロ野球選手の松井秀喜氏も、宮本武蔵に影響された一人。武蔵が剣術の極意を著した『五輪書』は、野球のバッティングを究めようと奮闘し続けた松井氏の愛読書としても知られている。

※週刊ポスト2019年11月22日号

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