震災後のボランティア診療 報酬請求できる“大岡裁き”あった

NEWSポストセブン / 2012年10月21日 16時1分

 ベストセラー『がんばらない』の著者で諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏は、チェルノブイリの子供たちへの医療支援などに取り組むとともに、震災後は被災地をサポートする活動を行っている。以下は、福島県平田村にある、震災復興支援放射能対策研究所についての報告である。

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 チェルノブイリでは、人口1万9000人の小さな村でさえ、内部被ばく量を測れるホールボディカウンターが2台あり、フル稼働して実態を測定してきた。

 ホールボディカウンターは、約5000万円もする機械だ。僕らは「体内被ばく量を正確に測るべきだ」と訴えたが、被災後半年経っても、なかなか国も県も動き出さなかった。やっと最近になって、福島県にホールボディカウンターが30台ほど設置されるようになった。今後は、内部被ばくの測定がかなり進むと思う。

 いち早く、昨年から内部被ばくの測定をしていたのは、福島県平田村にある、ひらた中央病院に付設されている震災復興支援放射能対策研究所である。この研究所が誕生するまでには、ちょっとした物語がある。

 震災直後、20キロメートルゾーンの中には、数多くの寝たきりの老人が、高齢者用の施設や病院にいた。この人たちを安全に圏外に搬出し、医療施設や介護施設に収容させる必要があった。そこで国や自治体、自衛隊の応援で実施した。

 ひらた中央病院があるのは、30キロメートル外である。ここにも30キロメートル内から、大勢のお年寄りが運びこまれてきた。すでに120人もの入院患者を抱えていたが、さらに寝たきりの患者を169人も引き受けたのだ。

 このことがインターネットで伝えられると、全国から医師や看護師がたくさん駆けつけた。こうした連携で苦難の時期を乗り越えた。

 当初、震災弱者に対するボランティアのつもりだった。ところが、政府は、病院や施設で看た場合は診療報酬か介護報酬を請求していいと“大岡裁き”をした。政府もたまにはいいことをする。

 さらにその先があった。病院側は、その収入を病院に入れず、福島の人のために役立てようと考えた。そして作ったのが前出の研究所である。研究所では2台のホールボディカウンターと、食品の放射線量を測定できるゲルマニウム半導体検出器を購入した。

 体内被ばく量の測定と、体内被ばくの大きな要因となる食品の測定を始め、放射能の見える化を実践した。しかも18歳未満の子どもたちに関しては、福島県の内外を問わず、すべて無料にすることを決めた。この病院の、志の高さが感じられる。

※週刊ポスト2012年10月26日号



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