大規模リストラの日産が新フェアレディZの開発を続ける理由

NEWSポストセブン / 2020年6月10日 7時5分

 そんなフェアレディZだが、いざ運転してみると、実は壮絶に楽しく、速く、バランスの良い、ミドルクラスとしては第一級のスポーツカーだ。筆者もステアリングを握る機会はまれにしかないが、乗るたびに新鮮な感動がある。

 スポーツカーといえば昨年、トヨタが「スープラ」を復活させたことがクルマ好きの間で話題になったが、その新鋭のスープラに乗った時、その良さを体感するのと並行して、発売から10年以上が経ったZの良さが脳裏に浮かんだものだった。

 エンジンのパワー感、いかにもフリクションの小さそうなメカニカルノイズとアドレナリンを分泌させる排気音、スロットルレスポンスの良さ。左右のサスペンションマウントを堅牢なタワーバーで締結したシャシーは剛性感抜群で、クルマの精密な動きがシートを介して体に伝わってくる。

 そんなZをたまたま直近でドライブしたのは今年2月、北海道での雪上試乗だった。

 スタッドレスタイヤを履き、車両安定装置も装備しているとはいえ、後輪駆動のハイパワースポーツを雪上でドライブするのにいかほどの緊張を強いられるかと思いきや、右曲がりと左曲がりでの挙動の違いのなさ、雪上の低ミュー路でも滑り出しが如実にわかるインフォメーションの豊かさ、そして実にバランスの良い前後サスペンションのロールセッティングの合わせ技で、ゲレンデでスキーを楽しむかのように走れたのだ。量産スポーツカーとして世界に誇れる性能だと確信をもって言える。

 それだけの性能や楽しさを持ちながら、なぜフェアレディZはここまで印象希薄になってしまったのか。その一因はデザインにあるような気がする。全体のシルエットは実は結構マッシブなのだが、フロントフェイスとテールエンドの妙な造形がその良さを打ち消してしまっている。

 スポーツカーにとってルックスの第一印象は命とも言えるもので、見ただけでそのクルマがどういう特質を持っているか、何を目指しているかが直感的に伝わってくるものでなくてはならない。現行フェアレディZは乗り込んで操縦してみるまで、その本性に気が付かない。デザインにそれを予感させる部分がないからだ。

 来年までに発売されるという次のフェアレディZがどういうデザインなのか、細部はまだ不明だが、前述の予告映像で出てくるシルエットは美しく、かなりの期待感を抱かせるものがある。動的な部分がどうなるかについては、現行モデルの完成度から推測して悪いことにはなるまい。

 もちろんフェアレディZひとつで日産のイメージが劇的に好転するということはないだろう。スポーツカーを1台、2台作っても、それ以外のモデルとの乖離が大きければ、たまたま遊びで作ったと思われるだけである。

 では、日用品のモデルをスポーツカーに寄せて作ればいいのかといえば、それも全然違う。日産だけでなく、スープラや「86」を作っているトヨタ、「NSX」を作るホンダ、「ロードスター」を作るマツダも同じような悩みを抱えている。

 スポーツカーを孤立させず、パーソナルモビリティが持つ移動の喜びを追求するブランドを象徴する存在に昇華させることができるか。その困難なチャレンジがこれから始まるわけだが、少なくとも日産が目先のことだけにとらわれず、長期的にモノを見ようという意思を捨て去っていないということが分かっただけでも、日産ファンにとっては朗報と言えるだろう。

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