池上彰氏が解説 コロナ禍での中国の圧力をどう見るべきか

NEWSポストセブン / 2020年7月11日 7時5分

 さらに中国は4月、南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)を管轄する行政区を新設しました。南シナ海はそもそも公海です。その一部に関してベトナムやフィリピンが自国の領海だと主張していましたが、中国政府は「南シナ海は中国の領海」だと一方的に宣言し、サンゴ礁を次々に埋め立てて島を造成。軍事基地を建設してしまいました。この行動に対しては、ベトナムやフィリピン、さらにアメリカが強く非難してきました。

 ところが、各国が新型コロナウイルス対策に追われている隙を突く形で、南シナ海の支配を強めているのです。

 それだけではありません。香港に対する締め付けも厳しくしています。香港は1997年、イギリスから中国に返還されました。このとき中国は、香港に対して「一国二制度」を適用し、50年間は香港に中国の法律は適用せず、言論・表現・報道の自由を認めると宣言しました。中国国内では中国共産党によって、こうした自由が制限されていますが、香港は特別扱いすると言ってきたのです。

 ところが、香港で民主化運動が盛り上がると、中国政府は、この運動を「暴動」と決めつけ、香港政庁に対して取り締まりを強めるように圧力をかけてきました。

 そもそも香港の憲法にあたる「香港基本法」では、香港で適用される法律は香港の議会である立法会が制定すると定められているのに、中国の国会に当たる全国人民代表大会が5月、香港の立法会の頭越しに「国家安全法」の制定方針を採択し、6月末に法案が可決されました。

 この法律は、中国政府に対する「反逆、分離、扇動、転覆」を禁止するというものです。今後は、たとえば「中国政府は香港の民主化運動に介入するな」と香港で主張することが、中国政府に対する「反逆」や「扇動」に該当すると判断されかねなくなったのです。事実、法律が施行された7月1日にはこの法律に違反したという疑いで10名が警察に逮捕されました(それ以外の法律に違反した疑いで360名も逮捕)。

 このように「中国に逆らうことは許さない」という大国意識をむき出しにしているのが、いまの中国です。そこには、かつて帝国主義列強の植民地にされていたことへの被害者意識と、経済的に大国になったことへの自信が入り混じった意識が見えます。

「中国への批判は許さない」という強硬な姿勢は、自国への自信のなさの裏返しとも見ることができます。

 アメリカと中国の狭間にあって、立ち位置に困る日本。まずは中国の現代史を知ることが大切です。

【プロフィール】いけがみ・あきら(ジャーナリスト)/1950年長野生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、1973年にNHK入局。報道局社会部記者などを経て、1994年4月から11年間にわたり『週刊こどもニュース』のお父さん役を務め、わかりやすい解説で人気を集める。2005年にNHKを退職し、フリージャーナリストに。名城大学教授、東京工業大学特命教授。愛知学院大学、立教大学、信州大学、日本大学、順天堂大学、東京大学、関西学院大学などでも講義する。主な著書に『伝える力』『知らないと恥をかく世界の大問題』など。近著に『池上彰の世界の見方 インド』『池上彰のまんがでわかる現代史 東アジア』がある。

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