緊急事態宣言時のような自粛はもう無理? むしろ「自律」を

NEWSポストセブン / 2020年7月10日 7時5分

「第2波」とどう向き合うか(時事通信フォト)

 再び新型コロナの感染者数が増え始めた7月1日、菅義偉・官房長官は会見でこう述べた。

「現在は緊急事態宣言に当たるとは考えていないが、今後感染者の増加スピードが高まれば、最悪の場合、緊急事態宣言を発する可能性はある」

“感染再拡大”への懸念が高まる中、再び「緊急事態宣言」「自粛・休業要請」が発令されるのではないか──政府は慎重な姿勢を示しているものの、そんな不安が頭をよぎる。しかし、約2か月の自粛期間を経て、再自粛に「待った」をかける人々も少なくない。ジャーナリストの鳥越俊太郎氏が語る。

「高齢者や基礎疾患のある人が重症化しやすいとされますが、それだけを見て社会全体がパニックになるのはおかしい。そもそも新型コロナによる死者数は979人(7月7日時点)ですが、インフルエンザによる死者数は毎年3000人、関連死を含めれば1万人とされます。新型コロナによる死者数は特別に多いわけではないのです。

 それなのに外出自粛を求められて素直に応じていれば、私のような高齢者は下半身から弱ってしまう。緊急事態宣言も、真面目に自粛した人ほど足腰が弱って悪影響が出てしまった。私はそうならないために、マスクや消毒などの予防をしたうえで散歩にも出かけていました」

 コロナ禍において「自粛は嫌だ」と主張すれば、批判を受けることもあり得る。しかし、鳥越氏が語るように、マスクの装着や手洗い・消毒など、人々の生活にはすでに基本的な予防意識が定着している。経済ジャーナリストの荻原博子氏が語る。

「緊急事態宣言を経験して、感染リスクを低減する予防法は国民に広く周知されました。たとえば、人通りの少ない近所の道路や公園では、無理してマスクをつけて歩かなくてもそれほど感染リスクは高くないという知識を皆が身につけている。一方で、電車内などではマスク着用が必須だし、人と会うときもオープンカフェなどを選んだほうが三密は避けられる。無理して外出することはありませんが、今では国民の多くがそのような適切な予防行動をとれています。

 ほとんどの人々は、『4月の緊急事態宣言と同様の自粛はもうできない』と感じている。これからは“定義のない自粛”を求められても限界があります」

 感染予防に努めることはあくまで前提だ。生活者の実感としては「もう自粛はしない」という意見は必ずしも“暴論”とは言えないのではないか。

「もう自粛なんてしない」──そう主張する識者たちに共通しているのは、決して個人が好き勝手に振る舞えばいいということではない。第2波の到来を前にして必要なのは、政治や行政が押しつける「自粛」ではなく、国民全員が第1波の経験をもとに身につけた「自律」で行動するという生活様式だ。

「自粛」という言葉に伴う「正義感」との向き合い方も問われている。自粛警察に潜むのは「自粛が正義、自粛しないのは悪」という価値観だが、第2波を迎える前に、その3か月前の“常識”を変えていく必要があるのかもしれない。

 第2波がどのような形で訪れるかは、誰にも分からない。第1波の自粛を総括し、今後の望ましいあり方を考えることは、来たるべきリスクと向き合うことでもある。

※週刊ポスト2020年7月24日号

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