切らないがん治療「陽子線治療」 患者は「バカンスのよう」

NEWSポストセブン / 2020年8月3日 16時5分

陽子線は病巣をピンポイントで攻撃できるため、正常な組織への影響が最小限に抑えられる(写真/新日本科学提供)

「切らない、痛くない、こんな治療法があるなんて信じられない気持ちでした。術後の生活は手術をした場合とは比べものになりません。陽子線治療が受けられて本当によかったと心から思います」

 こう話すのは、4年前に乳がんと診断された長野県在住の原田真弓さん(仮名・60才・会社員)。2度目の乳がんだった。

「1度目は右胸。幸い早期発見で、部分切除手術と放射線治療でがんは消え、ようやく迎えた10年目の定期検診で、今度は左胸に見つかったんです」

 今回もステージIで、命にかかわることはないと言われた。しかし、“また手術か…”と深いため息がもれた。右胸に残る大きな傷痕。1度目の治療がトラウマになっていた。

「術後に半年近くも続いた、あの痛みにまた耐えなきゃいけないのかと思うと…。腕を動かすだけで手術痕が引きつるように痛み、寝返りのたびに切除した胸の奥の痛みで目が覚める。切る治療の痛みやつらさを知っているからこそ、気持ちはどんどん塞いでいきました」(原田さん)

 しかし、治療を先延ばしにはできない。手術に向けて粛々と準備を進めていた。そんなとき、ある新聞記事が原田さんの目に留まった。乳がんの陽子線治療の臨床試験が始まったという内容だった。すぐに連絡を取り、2016年春、鹿児島県指宿市にある『メディポリス国際陽子線治療センター』で陽子線治療を受けることとなった。

◆99才肺がんの患者も治療

 がんの治療は、手術でがんを切除する「手術療法」、抗がん剤などの薬物でがん細胞を死滅させる「薬物療法」、放射線を照射し、がん細胞を死滅させる「放射線療法」が3大療法と呼ばれ、がんの部位やステージ、年齢によって治療法を選択する。

 原田さんが受けた「陽子線治療」とは放射線治療の1つ。2012年に作詞家のなかにし礼(81才)が、この治療で食道がんを克服したことでも話題になった。先進医療としても注目され、治療を受けた患者から「夢の治療」と呼ばれることもある。

『メディポリス国際陽子線治療センター』のセンター長・荻野尚医師が解説する。

「陽子線治療は切らない治療で、痛みがなく、副作用も非常に少ない。さらに再発がほとんどないといわれています。

 従来の放射線治療はX線を使います。X線は体の中を通り抜ける性質があり、がん細胞を攻撃すると同時に、正常な組織にもダメージを与えるため、副作用や新たながんを誘発するリスクがあります。

 一方、陽子線は水素の原子核を光の速さほどにまで加速させて照射する治療法。病巣をピンポイントで攻撃でき、がん周辺の正常な組織への影響が最小限に抑えられます」

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