【法律相談】コロナ感染を隠して出社してクビに 妥当な処分か

NEWSポストセブン / 2020年8月17日 7時5分

感染を隠して出社したらクビに…

「感染者を非難・批判しないように」というコンセンサスは広がりつつあるが、感染者が市中に出れば話は別。感染の事実を隠して出社した社員が解雇処分となった場合、これは妥当なのか? 弁護士の竹下正己氏が回答した。

【質問】
 中間管理職です。私の部下が家族内感染して入院中。会社は、この部下が事実を隠し、出社したとして解雇を決定。感染拡大のリスクがあるのに、出社した罪は大きいとの判断のようです。ただ、自覚症状のない感染で、自ら言い出しづらかった部下の気持ちもわからなくはありません。部下を救う手立てはないでしょうか。

【回答】
 会社が従業員を解雇するには、就業規則に定められた解雇事由に該当することが前提で、さらに解雇権の濫用にならないことが必要です。その就業規則の「解雇の事由」に該当しない限り、会社は従業員を解雇できません。

 就業規則は職場によって様々ですが、伝染病を解雇事由に定めている就業規則はないはず。あなたの会社も病気自体ではなく、家族感染を知りながら出社し、職場に感染拡大のリスクをもたらしたことを理由にしていると思われます。

 厚労省のモデル就業規則で検討すると、解雇事由中に含まれている懲戒事由の中の「故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき」に該当する、という理屈が考えられます。

 患者発生による職場の消毒や、その間の休業は確かに損害ですが、重大な損害だとしてしまうには無理があります。また、家族感染があっても、自覚症状がなければ、感染したと思いたくないのが人情ですし、事実、家族間でも感染の有無が分かれた例も知られています。以上により、出社に重大な過失があったとまでいえるかも疑問です。

 ともあれ、感染のリスクがあったことは事実で、申告せずに出社を続けたことは社会人として批判されるでしょうが、解雇事由には当たりません。理屈をこねて解雇を強行しても「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には解雇は無効となります。似たような境遇の人は多くいますし、解雇が争われれば、世間の格好の話題になり、批判も受けるでしょう。

 こうした場合に備え、一定の場合には申告義務を課することも考えられますが、自分や家族の罹病情報は個人情報でもあり、疑問が残ります。家族が病気の場合でも、安心して休めるような職場環境を整えるのが王道だと思います。

【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2020年8月28日号

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