安倍氏退陣表明前からすでに権力交代も、自民内部では抗争激化

NEWSポストセブン / 2020年9月2日 7時5分

虎視眈々と…?(時事通信フォト)

 安倍晋三・首相の体調悪化が表面化する前から、政権内部ではひそかに権力の交代が進んでいた。「総理の側用人」と呼ばれた今井尚哉・首相補佐官を頂点とする官邸官僚が力を失い、「影の総理」菅義偉・官房長官が再浮上したからだ。

 政府のコロナ対応が二転三転する混乱の原因はそこにあったといえる。

 安倍氏が慶応大学病院で検査を受け、「健康不安説」が広がる最中の8月20日夜、菅氏と二階俊博・幹事長が会談した。検査といっても首相が入院したわけではなく、会談前日には官邸で公務に復帰していることは2人も当然承知している。

 首相が辞任する前に、ポスト安倍を巡ってタッグを組む菅氏と二階氏が政局をにらんだ会合を持ったのだから“謀叛”と見られかねない大胆な行動といっていい。しかし、2人はもう首相を怖れていなかった。毎日新聞専門記者兼論説委員の伊藤智永氏はこう語る。

「安倍政権はすでに事実上の“菅政権”になっていた。つい最近までは、首相補佐官の今井氏らが総理の権威を笠に着て実権を振るう“側用人政治”と呼ばれたが、官邸官僚はアベノマスク配布や持続化給付金業務の電通への委託といったコロナ対策を打ち出して失敗し、総理との関係もギクシャクしていた」

 代わって指揮を執っているのが菅官房長官だ。

「菅氏は感染拡大下でGo Toトラベルキャンペーンを推進してきた。暖房と冷房をいっぺんにかけるような政策は、『医療崩壊しない限り、社会経済活動は止めない』という方針だからです。新規感染者数が過去最高を更新しても、政府は緊急事態宣言を発令しない。それも総理ではなく菅氏が判断していた」(伊藤氏)

 政権の権力構造はコロナ禍で大きく変わっていたというのだ。二階派幹部がシナリオをこう語る。

「安倍総理が退陣すれば総裁選になる。ワンポイントリリーフで首相再登板を目指す麻生太郎副総理が麻生派、岸田派、そして安倍総理の出身派閥の細田派と組めば、菅─二階連合では数で勝てない。それなら、安倍総理をできるだけ延命させて、官邸は菅さん、党は二階さんが権力を掌握し、ポスト安倍に備えて麻生さんの力を削いだ方がいい」

レガシーが何もない

 そうした2人の計略は安倍氏の辞任で大きく狂った。安倍氏から政権禅譲してもらうつもりだった麻生氏や岸田文雄政調会長らの反発を招き、自民党内抗争が激化するのは間違いない。この計略は一旦変更されることとなるが、自民党内での動きは激しくなっている。

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