血中マイクロRNAの解析で膵臓がんの早期発見が可能に

NEWSポストセブン / 2020年10月22日 7時5分

膵臓がんの早期発見方法に進展か(イラスト/いかわ やすとし)

 膵臓がんの初期は自覚症状に乏しく、発見されたときは進行していることが多い。そこで膵臓がんの早期発見に繋がると期待されているのが、リキッド・バイオプシーだ。体液(血液、尿、唾液など)から、膵臓がんに特異的に発生するマイクロRNAを分離して検査する。ただ採血の状況や分離する条件で結果が大きく変わるため、最適条件に基づいた適切な検査を構築する研究が進んでいる。

 がんによって5年生存率は違う。例えばステージIの肺がんの5年生存率は71.2%で、乳がんでは実に95.2%と高い。一方、膵臓がんは39.9%であり、すべてのがんの中で最も低い。膵臓がんは進行が早く、発見されても、かなり症状が進行しているケースが多く予後も悪い。

 膵臓がんの検査は血液検査と超音波検査で行なう。これらの検査結果の他に膵臓がんのリスク因子である糖尿病や慢性膵炎が確認でき、膵臓がんが疑われる場合は造影CT検査、造影MRI検査、超音波内視鏡検査などで診断。さらに最近では、もっと手軽に早期発見が可能になる検査としてリキッド・バイオプシーの研究が進められている。

 国立がん研究センター東病院肝胆膵内科の光永修一医長に話を聞いた。

「バイオプシーというのは組織を採取して検査すること。リキッド・バイオプシーとは血液などの体液の中に浮遊する腫瘍組織の一部を採取し、検査する方法です。直接、腫瘍組織を体内から採取する方法と比較して簡便に実施できるメリットがあります」

 リキッド・バイオプシーの検査は3種類ある。腫瘍細胞そのものを体液から採取する方法はすでに乳がん検査で行なわれている。また腫瘍細胞そのものではなく、体液中に出た腫瘍組織由来のDNAやRNAを採取し、検査する方法の研究が進行中だ。

 がんの種類により、検査に用いる腫瘍由来成分に何を使うかが違う。膵臓がんの場合、血液に出てくるがん組織由来の腫瘍細胞やDNAの量が非常に少ないので、早期発見を目的としたリキッド・バイオプシーには向かない。しかし、治療においては採取した遺伝子を検査した上で効果がある薬を探したり、術後の患者で血中腫瘍細胞を発見した場合には転移の可能性を考慮して抗がん剤を増やすといった応用が行なわれ始めている。

 そのような状況を踏まえ、早期膵臓がんの発見に役立つのでは、と考えられているのが、血中のマイクロRNAだ。

「マイクロRNAはDNAと同じ核酸です。マイクロRNAは細胞の中で他の遺伝子が使われる量を調整する役割を担うと考えられている10個未満の短い配列RNAとなります。膵臓がん患者の血液中には特有のマイクロRNAがあり、それが特定されつつあります。この中から、早期診断に役立つものを探し出し、検査として確立する研究を行なっています」(光永医長)

 研究室レベルでは血液中から、マイクロRNAを採取しての早期膵臓がんの診断が可能とされている。ただし、採血の条件や分離などにより、結果に大きな差が出ることもわかってきた。現在、それらの条件の最適化を目指し、よりよい研究が日夜積み重ねられている。少量の血液から、早期膵臓がんを特定できる日も、そう遠くではない。

●取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2020年10月30日号

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