いのちの電話相談員 自死に関する経験を乗り越えた人が多い

NEWSポストセブン / 2020年11月24日 7時5分

「相談員になって私の人生は大きく変わりました。私はもともと気性が激しく、経営する居酒屋でも気に入らない客には『二度と来るな!』と怒鳴るような荒くれ者でした。しかし相談員の研修で、私自身の話をじっくり聞いてもらったとき、それがどれほどうれしいものかを、身をもって知ることができました」(山本さん)

 相手が思いの丈を吐露して救われたと感じたとき、相談員もまた同様の気持ちを感じている。「北海道いのちの電話」の別の相談員はこんな経験を明かしてくれた。

「女性関係で悩んでいる男性からずっと話を聞いていたら、30分ほどたったとき、その相談者の男性から『どうして、ぼくのくだらない話をこんなに聞いてくれるんですか?』と尋ねられたことがあった。

『当然のことです』と答えると、その男性は一転、胸の内に抱えていた本当の悩みを打ち明け始めました。それは、別居中の奥さんと住む子供に会えなくてつらいという話でした。こちらが相談者の話を否定することなく聞き続けたことで、普段は誰にも話すことができず、心の奥底に抱え込んでいた悩みを話してくれたのだと思います。これは、相談員の私にとって、うれしい出来事でした」

 精神科医の樺沢紫苑さんが指摘する。

「人間は相手への信頼度の深さによって、開示する情報の量や質を無意識に決めている。この相談員は、相手の話を聞くことで信頼され、関係を深めたのだと思います。また、心を不安にさせる真の悩みは、表面的な別の悩みに覆い隠され、本人すらそれを自覚できないことも少なくない。だからこそ、悩みを聞くことは難しく、また重要なのです」

 鴨居にロープをかけた60代女性の話に耳を傾けた相談員は、「死のうと思っていたけれど、今日はこうして電話をかけてくださったんですね」と語りかけると女性は少し驚いてこう発した。

「あ、私、生きたいっていう気持ちがまだあるんですね」

 相談員が振り返る。

「この女性はご自身でそれに気づいたんです。その言葉を聞いて、私はまだこの女性には生きる力があると感じました。そして、『最後にひとつお願いがあります。もういすに乗るのはやめてほしい』と伝えました。すると女性は、『はい』とはっきり返事をしてくれました。話をするうちに、相談者が自ら生きたいと思っていることに気づくことは、自分にとってこの上ない喜びです」

【相談窓口】
「日本いのちの電話」
ナビダイヤル0570-783-556(午前10時~午後10時)
フリーダイヤル0120-783-556(毎日午後4時~午後9時、毎月10日午前8時~翌日午前8時)

※女性セブン2020年12月3日

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