「多剤服用」に要注意 薬効を打ち消したり強めたりする5パターン
NEWSポストセブン / 2021年1月13日 7時5分
「これを飲めば症状が改善する」──そう信じて薬を飲むが、結果的に健康を悪化させることもある。東京都が発表した109万人の処方データから、飲めば飲むほど不健康になる“クスリのリスク”が明らかになった。
東京都健康長寿医療センター研究所などの研究グループは2020年2月、高齢者の多剤処方に関する論文を発表した。
同研究では、都内の後期高齢者(75歳以上)約109万人のレセプトデータ(診療情報)を分析。患者1人あたり平均6.4種類の薬が処方され、全体の64.0%の人が5種類以上服用していることが判明した。論文では多剤処方の5つの典型的なパターン(別掲図参照)とリスクを示している。
パターン1では、慢性心不全や浮腫性疾患で処方される4種類の薬剤の併用例が示された。秋津医院院長の秋津嘉男医師が指摘する。
「ここで注意すべきは、薬効を打ち消し合ってしまう『抗凝固薬+利尿薬』の組み合わせです。心不全やむくみの治療では、血管を詰まらせないために抗凝固薬が処方されますが、腎機能が低下している場合には利尿薬が併用される。利尿薬は水分を体外に排出させるので脱水症状になり、抗凝固薬の効果が薄れて血管が詰まるリスクが高まってしまうのです」
パターン1の患者には高血圧の人が多く、降圧薬も処方されることが多い。
「降圧薬は利尿薬と併用されると効きすぎて、血圧が下がりすぎることがある。脳に向かう血流が滞ってふらつきや転倒のリスクが生じます」(銀座薬局の代表薬剤師・長澤育弘氏)
秋津医師は「特にACE阻害薬系の降圧薬の服用に気をつける必要がある」と語る。
「心不全の患者がACE阻害薬系を併用すると、カリウム値が上がりすぎて心臓に負担がかかります。その結果、不整脈を引き起こすケースがある」
パターン2(不眠症やうつ病等の精神疾患)では薬の“効きすぎリスク”が生じるという。
「眠りが浅くなる傾向がある場合、睡眠薬も処方されることが多い。その後、うつ状態が悪化すると抗うつ薬や抗精神薬を追加されることもあります。これらの薬は似たような作用であるため、薬の効き目が強くなりすぎることがあります。瞳孔が開く、尿が出ない、便秘、胃荒れ、肥満などの症状が出やすくなる」(長澤氏)
歳を重ねるにつれて骨粗鬆症や、背中や関節の痛みに悩まされる人が増える(パターン3)。北品川藤クリニック院長の石原藤樹医師が指摘する。
「骨粗鬆症治療薬と鎮痛薬は、どちらも胃を荒らして胃腸障害を引き起こす副作用があります。それを防ぐために胃酸分泌抑制薬を併用しますが、その影響でカルシウムの吸収が阻害され、かえって骨粗鬆症を進行させてしまうことがある。そして今度は骨粗鬆症治療薬の量を増やす“負の連鎖”に陥ってしまいます」
薬の種類で“相性”が変わる
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