日本老年医学会が指摘 加齢で“効きすぎる”クスリ全29種

NEWSポストセブン / 2021年1月14日 7時5分

高齢者は薬の飲み方にどう注意する?(イメージ)

 東京都健康長寿医療センター研究所などの研究グループは2020年2月、高齢者の多剤処方に関する論文を発表した。

 同研究では、都内の後期高齢者(75歳以上)約109万人のレセプトデータ(診療情報)を分析。患者1人あたり平均6.4種類の薬が処方され、全体の64.0%の人が5種類以上服用していることが判明した。論文では多剤処方の5つの典型的なパターン(別掲図参照)とリスクを示している。

 また、多剤処方だけでなく、「加齢リスク」も考慮する必要がある。北品川藤クリニック院長の石原藤樹医師が指摘する。

「薬は胃や腸で吸収されたのちに肝臓で分解され、腎臓や消化管から尿や便として排出されます。しかし、加齢で肝臓や腎臓の機能が落ちると分解や排泄に時間がかかるので体内残存時間が延び、薬が効きすぎて不調が生じることがある」

 日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」には、「高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬物」として、29種類の医薬品が掲載されている。

 その中には、多剤処方の5つのパターンに登場する薬が多く含まれている。東京都の分析で最多の割合を占めた「高血圧治療薬(降圧薬)」の中では、「ループ利尿薬」のリスクが指摘された。

「尿を増やして体内の塩分を排出して血圧を下げる仕組みで、比較的運動量が多く代謝も活発な中年世代までには有効とされていますが、歳を取るにつれて効きすぎてしまうことがある。それまで服用していた人は、75歳を目安に別の降圧薬への変更を主治医に相談したほうがいい」(同前)

「糖尿病治療薬」では、インスリン分泌促進系のスルホニル尿素薬(SU薬)にリスクが潜む。ナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師がいう。

「糖尿病患者に最も多く処方される薬ですが、年齢が上がるにつれ血糖が下がりすぎるリスクが明らかになっています。

 糖尿病の治療は原則として生涯続きますが、75歳を目安にそれまで厳しくコントロールしていた血糖値の目標が緩和されます。数値が少し高いことよりも、薬が効きすぎることによる低血糖のほうが危ないからです。それまで飲み続けていた人は主治医に相談のうえ、減薬を考えていいでしょう」

 糖尿病治療薬で石原医師が名前を挙げたのは、インスリン抵抗性改善系のビグアナイド薬だ。

「腎機能が衰え始めることが多い75歳を目安に服用を継続するかどうか考えたほうがいい。血中の乳酸値が上昇し、嘔吐や下痢の症状が出る『乳酸アシドーシス』を発症する可能性がある」

 痛み止めに使われる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)にも気をつけたい。

「若い頃から常用する人も多いですが、胃腸の働きが弱まる75歳以上の人は長期的な使用は避けたほうがいい。胃の粘膜を保護する炎症性物質の働きを抑え、消化管出血や腎障害を起こしかねない」(同前)

 睡眠薬のベンゾジアゼピン系(BZ系)は、日本老年学会が発表した「75歳」の基準より早く減薬の検討が求められる。

「この薬は国内外の複数の研究で、65歳以上の人は認知症や骨折・転倒のリスクが増加することが分かっています」(同前)

 年が変わったのを機に、これまでの薬との付き合い方を見直してみてはどうだろうか。

※週刊ポスト2021年1月15・22日号

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