故丸谷才一氏の上手な挨拶のコツ「悪口1に対し10ホメよ」

NEWSポストセブン / 2012年12月28日 7時0分

 今年10月に亡くなった丸谷才一氏は、稀代の“あいさつ上手”としても知られていた。名文家としても名高い丸谷氏は、あいさつに関する著書も複数上梓。ジャーナリストの山藤章一郎氏が、丸谷氏の“あいさつ術”を軸に、氏を偲ぶ。

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 丸谷才一──1925(大正14)年生まれ、2012(平成24)年、87歳で没する。山形県鶴岡市出身。東大英文科卒。国学院大講師などを経て、35歳のとき、長編小説『エホバの顔を避けて』を発表。以後、小説家、文藝評論家、エッセイストと多彩な活動をした。芥川賞、芸術選奨ほか受賞。そして、稀代の〈挨拶家〉だった。軽妙洒脱、しかしときに寸鉄を呑んで辛辣、されど優しく収める奥義が評判を呼んだ。

 世の中には、これだけの〈挨拶〉というものがある、あるいは、これだけの〈挨拶〉ができねば一人前の社会人とはいえぬと世知を教える〈挨拶大家〉だった。では〈大家〉はいかなる挨拶に心を砕いてきたか。

 その種類だけでも。受賞挨拶。選考過程発表。結婚披露宴祝辞。乾杯の辞。偲ぶ会挨拶。発刊パーティ祝賀挨拶。親族代表挨拶。選考委員祝辞。レセプション祝辞。ねぎらいの会挨拶。各種記念式典挨拶。快気祝い挨拶。お別れの会挨拶。そして弔辞。これらは、『挨拶はむづかしい』『挨拶はたいへんだ』『あいさつは一仕事』と、本にまでなっている。

 そこで、『あいさつは一仕事』の丸谷さんと和田誠さん(イラストレーター)の対談から、〈挨拶の要諦〉を当方で勝手に整理して紹介します。

一:長くしゃべってはいけません。世の中にはエライという人種がいる。社長、大臣。私がしゃべれば、みんな喜んで聞くと思っている。その錯覚ほど迷惑なものはありません。原稿に書いて、必要なところだけ話しなさい。

一:余計な前置きを入れなさんな。「彼と私は小学校以来の友達でありまして」それから高校になって、大学生になってと、なかなか本題に入らないのは、なんだか怒りすら覚えます。

一:引用はひとつにしなさい。三つも四つも、いろんなところから引くと、こんがらがるだけですよ。

一:面白い話、笑いが出るところを一か所つくってください。井上ひさしさん〈お別れの会〉の夫人の挨拶は参考になりました。こんなことをいったんですね。

「わたしはいままでひさしさんにあなたは天才だといってきた。するとひさしさんはそういうことは絶対よそに行っていっちゃいけないよって。でも、もう止める人はいないんだから、わたし、今日ははっきりいいます」

一:とにかく褒めなさい。悪口ひとつにつき、褒めが三つ、四つでは足りませんよ。十か二十は、褒めなさい。そして長所を並べたそのあとで「欠点は」と、すこうし、間を置いてから「多すぎるからやめましょう」といえばいいのです。

※週刊ポスト2013年1月1・11日号



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