看護師不足の医療現場 「学徒動員」より給与アップが必要だ

NEWSポストセブン / 2021年1月10日 16時5分

「大阪コロナ重症センター」で研修する看護師ら(時事通信フォト)

 一都三県で再びの緊急事態宣言。ウイルスとは長い闘いを強いられているが、深刻なのは医療現場だ。コラムニストのオバタカズユキ氏が考察した。

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 それでなくとも足りなかった看護師が、新型コロナウイルスの感染拡大でさらに人手不足に。そして先日、厚生労働省が全国の看護系287大学に対し、大学院生や教員を医療現場に派遣するよう要望した。すると、このニュースに対し、ネット上では「学徒動員だ」という批判とも悲鳴とも取れる書き込みが大量発生した。

 学徒動員は、第二次世界大戦末期に労働力不足を補うため、国が中等学校以上の生徒や学生を軍需産業などで強制労働させたことだ。敗戦への道を突き進んでいった日本の象徴的事例のひとつだが、その哀史の記憶を今回、多くの日本人が呼び覚ましたのである。

 報道によると、厚生労働省の担当者はこうしたネット上での動きに、「あくまで看護師資格を持つ人に対してのお願いであり、強制するものではない」と話したそうだ。たしかに、看護師資格を持つ看護系大学の教員は基本的に医療現場で働いた経験があるだろうし、大学院生についても多くの看護系大学院では受験時に現場経験を求めているそうだから、ペーパー看護師というわけではない。

 しかし、この要望に応じて現場復帰するということは、それまで続けてきた教員としての仕事、学生としての勉学の中断を意味する。相応の犠牲を払わせるわけであり、そうした人材まで駆り出さなければならぬほど事態がひっ迫していることを表している。それはまさに医療崩壊寸前にあることの証拠みたいなものであり、衝撃的だ。だから、言葉としては大げさであっても、「学徒動員」という末期感のある言葉がピタッと当てはまり、一大トレンドワードになったのだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大による看護師不足については、日本看護協会が「看護職員の新型コロナウイルス感染症対応に関する実態調査」を行っている。その調査結果によると、「看護職員の不足感があった」と答えた医療機関は45.5%に上っている。調査は昨年の9月に行われたものだから、その後はさらに不足感が増したことだろう。

 また、全国の病院うち、新型コロナウイルス感染症対応による労働環境の変化や感染リスクなどを理由とした離職が「あった」と回答したのは15.4%。新型コロナの患者を受け入れている医療機関では、離職率が21.3%と高くなっている。

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