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十代目金原亭馬生 噺の世界をリアルに浮かび上がらせる話芸

NEWSポストセブン / 2021年4月25日 11時5分

十代目金原亭馬生の魅力は?(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、東急百貨店東横店9・10Fにあった東横ホールで1985年まで開催されていた「東横落語会」での十代目金原亭馬生の思い出と話芸についてお届けする。

 * * *
 CD20枚組のボックスセット「十代目金原亭馬生 東横落語会」(小学館)が届いた。去年から予約して楽しみにしていた商品だ。

 大学時代の僕が毎月通った東横落語会は、小さん、馬生、志ん朝、談志、圓楽、小三治らが顔を揃える贅沢な会だった。そして、この東横で僕は馬生が大好きになった。

 手掛けた数多くの演目は他の演者にはない名フレーズの宝庫で、どれを取っても実に印象的。父の志ん生と弟の志ん朝の陰に隠れて過小評価されがちだったが、馬生もまた名人だった。フワフワとした佇まいで“江戸の粋”を体現する演者で、噺の世界を高座にリアルに浮かび上がらせる鮮やかな話芸は唯一無二。54歳の若さで馬生が亡くなった時、落語界は失ったものの大きさを知った。

 収録演目は次のとおり。

●上巻(CD1~10)

『ざる屋』『笠碁』『辰巳の辻占』『明烏』『狸賽』『もう半分』『文七元結』『妾馬』『酢豆腐』『たがや』『肥瓶』『湯屋番』『真景累ヶ淵~豊志賀』『目黒のさんま』『今戸の狐』『つづら』『垂乳根』『大坂屋花鳥』『千両蜜柑』『花筏』『お見立て』『王子の狐』『首ったけ』『お富与三郎~島抜け』『お富与三郎~与三郎の死』

●下巻(CD11~20)

『らくだ』『紀州』『花見の仇討』『そば清』『道具屋』『百年目』『江島屋』『替り目』『溲瓶』『夢の瀬川』『青菜』『干物箱』『死ぬなら今』『柳田格之進』『うどん屋』『三軒長屋』『天狗裁き』『牡丹灯籠~忠僕孝助』『幾代餅』『長屋の花見』『文違い』『あくび指南』『鰍沢』『お血脈』『お初徳兵衛』

 現存する東横落語会の音源から厳選した全50席。『笠碁』『目黒のさんま』『らくだ』『そば清』『つづら』『明烏』『花見の仇討』『千両蜜柑』といった十八番はもちろん、“志ん生の血”を色濃く感じさせる『青菜』、独自の演出が効いている『干物箱』等、馬生ならではの演目が堪能できる内容だ。人情噺では『江島屋』や『夢の瀬川』の初商品化が嬉しい。

 特筆すべきは別添の初回出荷特典CD。1席目の『付き馬』は年末特別興行での録音で、早桶屋の場面まで語ったところで馬生が舞台から去り、そこから芝居仕立てとなって、小さん(早桶屋の親父)と圓生(付き馬)のやり取りとなる趣向。名人同士の貴重な掛け合いだ。

 もう1席は『二番煎じ』。ある“言い間違い”が疵となって本編には収録されなかった馬生十八番だが、この“言い間違い”がまた実に可笑しく、むしろ“奇跡の高座”として馬生ファンには珍重されるはずだ。どうせならこの特典CD付き商品を今すぐ購入することをお勧めする。

【プロフィール】
広瀬和生(ひろせ・かずお)/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。『21世紀落語史』(光文社新書)『落語は生きている』(ちくま文庫)など著書多数。

※週刊ポスト2021年4月30日号

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