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「もの忘れ」と「認知症」はどう違うのか? 記憶のメカニズムを解説

NEWSポストセブン / 2021年5月10日 19時5分

「もの忘れ」と「認知症」の違いを比較(写真はイメージ。Getty Images)

 人間の記憶にはいくつかの種類がある。代表的なものが長期記憶と短期記憶である。長期記憶とは、自分の名前や誕生日など、生涯にわたって保持し続ける記憶。短期記憶は、かけた後にすぐに忘れてしまう電話番号など、短期的な記憶をいう。

 記憶のメカニズムは諸説あるが、近年有力視されているのは、「記憶痕跡」と呼ばれるもの。記憶した際に使った特定のニューロンを刺激することで、覚えたものを思い出すとされている。

 一方、忘却については、ヘルマン・エビングハウスの研究が広く知られている。一度記憶したものは1時間で56%、1日で74%は忘れてしまう。その後、緩やかな曲線を描いて徐々に忘れていくのが忘却の仕組みだ。

もの忘れとは脳によるエネルギー節約の結果である

 加齢に伴う記憶力の低下はある程度は避けられない。「顔は覚えていても名前が思い出せない」「取引先への道順がなかなか覚えられない」といった経験が重なると途端に不安を覚えるものだが、『脳を司る「脳」』(講談社)の著者で、お茶の水女子大学理学部生物学科・毛内拡助教はこう解説する。

「もの忘れがひどくなるのはシナプス伝達の効率が悪くなっている証拠です。シナプス伝達は強くなったり、弱くなったりする性質を持っています。これはシナプス可塑性と呼ばれ、何度も同じことを学習すると、シナプス伝達が強くなっていきます」

 脳の働きの根底にあるのは、ニューロンと呼ばれる神経細胞だ。ニューロンは脳内に複雑なネットワークを張り巡らし、それらはシナプスを介してつながっている。ニューロンが発生させる電気信号がシナプスによって神経伝達物質に変換され、別のニューロンに伝えられて脳は動いている。

「シナプスによる伝達は常に一定ではありません。より効率的に働くように、使わなくなれば徐々に失われていきます」(毛内助教)

 脳のエネルギー消費は膨大であるため、使わないシナプスは節約のために徐々に弱まり、消えていく。これが「記憶を失う」という現象だ。「もの忘れ」とは、脳がエネルギー消費を節約した結果、さほど重要ではないと判断したものを記憶しなくなることで起こると言い換えられる。

 加齢によってもの忘れが多くなるのは不自然ではないと言える一方、認知症は別だ。老化によるもの忘れは「忘れた」という自覚があるが、認知症は脳の異常が要因であるため、体験したこと自体を忘れ、忘れた自覚すらない。

 家族や周囲の人たちから、自分でも気づいていないもの忘れを指摘されるようになったら、かかりつけの病院などに相談してみることが必要だ。

※週刊ポスト2021年5月21日号

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