森永卓郎氏が良書認定 インフレ時の資産防衛術を解説した本

NEWSポストセブン / 2013年1月18日 16時0分

【書評】『2013年、インフレ到来 プロが明かす資産防衛5つのポイント』(平山賢一/朝日新聞出版/1575円)

【評者】森永卓郎(エコノミスト)

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 いま世界で起きていることは、1940年代と酷似している。当時も、政府が債務を拡大するなかで、国債金利が低位に保たれた。中央銀行が国債を買い入れる形で資金供給をすれば、長期金利は上がらず、国債は値下がりしない。しかし、それには限度があり、限度を超えると高率のインフレが到来する。だから著者は、今後、金利やインフレ率が急上昇する可能性が高まっていると指摘する。

 我々は15年続いたデフレのなかで、すっかりデフレに慣れてしまった。しかし、インフレに転換することになれば、経済活性化というメリットだけではなく、さまざまなデメリットも発生する。

 その一つが、資産防衛がむずかしくなるということだ。デフレの時代には、現金や銀行預金を持っていればよい。物価が転げ落ちていくのだから、金利がつかなくても、現預金の価値が高まっていくのだ。しかしインフレになれば、そうはいかない。現預金はインフレに弱く、目減りしてしまうからだ。

 アベノミックスで、株価が上昇したことから、単純に株を買っておけば、インフレに備えられると考えている人も多い。だが、そうではないと著者は言う。インフレ転換すれば、企業のコストが上がる。それを製品価格に転嫁できなければ、企業収益が圧迫されるので、株価は抑制されてしまうのだ。

 それでは、どうしたらよいのか。著者は、国債、物価連動国債、商品、不動産、金など、さまざまな投資対象が、インフレ期にどのような値動きをして、どの程度インフレ防衛力を持つのかを丁寧に検証している。その分析には高い説得力がある。

 ただ、その分析から明らかになったことは、どの投資対象にも一長一短があって、ここに全額投資していれば大丈夫という投資対象がないということだ。だから、インフレ期に入ったら、経済の変動に応じて、機敏に運用の対象を切り替えていかなければならない。そのためには、金融商品の特性を正確に理解する必要がある。本書は、インフレ対策の第一歩を手助けしてくれる良書だ。

※週刊ポスト2013年1月25日号



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