「土」のフルコース 命が育つ土を食べさせるフレンチの名店

NEWSポストセブン / 2013年1月28日 7時0分

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カブの根が添えられた「じゃがいもの澱粉と土のスープ」

「土のフルコース」を出す一風変わったフレンチがある。五反田の老舗「ヌキテパ」だ。オーナーシェフの田辺年男氏は、以前からテレビ番組などでも土を使った料理で評価を得ている。先日、そのヌキテパで「土の試食会」が行われた。潜入した編集者/フード・アクティビストの松浦達也氏は「土」を食べ、何を思ったのだろうか。

 * * *
「土を食べるのか……」。五反田にある老舗の名店「ヌキテパ」のオーナーシェフ、田辺年男氏が以前から「土の料理」に傾倒していることは知られていた。……が、自分で食べるとなると話は別だ。そもそも土を食材だと考えたことがないし、自ら進んで食べに行こうとは思わなかった。

しかし、知人に誘われたとなると話は違う。「度胸のないヤツだ」と思われるのもシャクだし、滅多にある機会でもない。ノコノコとヌキテパで行われるという試食会に出かけることになった。ちなみに店名の由来は、フランス語の“Ne quittez pas.”。田辺シェフが語感の響きを気に入ってつけたこの名前は、電話を取り次いだりするときに「(電話を)切らないでお待ちください」という意味で使われるという。

この日、ヌキテパで供されたメニューは以下の7品。
1.じゃがいもの澱粉と土のスープ
2.サラダ 土のドレッシング
3.海のミネラルと陸のミネラル ハマグリと土の上澄みのジュレ
4.土のリゾット ハタのソテー ごぼうのソース    
5.土のアイスクリーム
6.土のグラタン
7.土のミントティー

メニューを見て、クラクラした。全メニューが土だ。しかも一品目から「土のスープ」――つまり「泥」。辞書で「泥」を引くと「水が混じって軟らかくなった土」(大辞林)とある。目の前のロングのホットグラスには、薄めではあるもののそのスープが入っていて、薄く切ったトリュフのフタが乗せてある。フタを開けると、温かいスープで蒸されたトリュフの香気が立ち上る……が、泥である。

もっとも口をつけてみると、想像した「泥臭さ」はまったくない。トリュフをかじりながらスープをすすると、土というよりトリュフの香りが鼻に抜けてくる。口にしたときの清涼感は、天然の硬水にも少し似たミネラル味が感じられる。

その後も、すべての皿に「土」が登場したが、どの皿を食べても舌の上が軽い。サラダのビネガーやソテーのバターソースといった強い余韻もスッと流してくれる。和の食材でも、豆腐のように、皿と皿の間にその前に食べた味をリセットしてくれる食材もある。だが土は食べながらにして、舌がすっきりする。とりわけ野菜とのなじみがいい。不思議な後味だ。

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