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高齢者への「多剤処方」問題 医師と患者のコミュニケーション不足が原因に

NEWSポストセブン / 2021年9月23日 7時5分

「薬の危険な飲み合わせ」には注意したい(イメージ)

 高齢になり基礎疾患が増え、あちこちの病院にかかることで薬が増えていく「多剤処方」。これによって病状がさらに悪化するリスクも指摘されている。その背景には、医師が漫然と処方を続けてしまうことや知識不足もある。そして、大きな問題はそうした多剤処方のなかに、「薬の危険な飲み合わせ」が含まれる恐れがあることだ。実際にそうした事例は多数報告されている。

 まず参照したいのが、公益財団法人日本医療機能評価機構が公表する「薬局ヒヤリ・ハット事例」だ。全国4万超の薬局から危険な処方の事例を収集しまとめている。

 向精神薬のリチウム製剤を服用中の50代男性に、非ステロイド性抗炎症薬が追加処方されたケースがあった(別表症例)。薬局で、患者が薬剤師に「向精神薬の処方医に非ステロイド性抗炎症薬の薬は服用しないよう言われている」と話したことから、疑義照会でアセトアミノフェンに処方が変更された。

 同事例が発生した要因は、〈患者とのコミュニケーション不足〉とされる。一石英一郎医師(国際医療福祉大学病院消化器内科予防医学センター教授)はこう語る。

「現役世代の男性なので、精神科や心療内科への通院の事実を自分から言いにくかったのでしょう。医師は他に服用している薬があるかどうかを詳しく聞かず、とりあえず痛みによく効く非ステロイド性抗炎症薬を処方したのかもしれません。しかし、これを向精神薬のリチウム製剤と併用すると、リチウム中毒になる恐れがあります。吐き気や下痢などの消化器症状のほか、意識障害が起こるとされます」(一石医師)

 糖尿病治療のためインスリン製剤を投与中の70代男性は、浮腫が出たため別の病院でループ利尿薬を処方された。薬局は併用注意について説明したが、1週間後、「インスリン製剤の単位数を上げても血糖値がどんどん上がる」と相談を受け、処方医に疑義照会したところ、ループ利尿薬が処方削除されたという。

「両剤の併用では、血糖降下作用が著しく弱まる恐れがあり、高血糖の状態が続くと激しい喉の渇き、多尿、頻尿が生じ脱水状態になります。脳細胞の水分が奪われて最悪、昏睡状態に陥ることもある。事例には〈(ループ利尿薬の)処方医はインスリン製剤を使用していることは知っていた〉とあるため、糖尿病に詳しくない医師だったのかもしれません」(一石医師)

 脂質異常症治療薬のスタチン系薬を服用中の50代女性には、かつて「併用禁忌」だった脂質異常症治療薬のフィブラート系薬が追加処方された。両剤の併用は筋肉痛や脱力感、急激な腎機能悪化を伴う「横紋筋融解症」の副作用リスクがある。

「横紋筋融解症とは骨格筋細胞の壊死、融解によって筋細胞成分が血液中に流出した状態です。急性腎不全を併発することが多く、最悪、命に関わる可能性があります。スタチン系とフィブラート系の併用は今は『併用注意』ですが、相互作用のリスクは変わりません。処方した医師は、脂質異常症の薬の知識が不足していたのでしょう」(一石医師)

「薬局ヒヤリ・ハット事例」からは医師の“危ない処方”を水際で食い止めた緊迫感が読み取れる。

※週刊ポスト2021年10月1日号

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